【3月30日 AFP】近い将来、ロボットはわれわれの仕事を奪うのだろうか──。

 技術革新が産業やその労働力に影響を与えるようになって久しいが、近年の人工知能(AI)やロボットの進化は、高度な技能や知識を要する職種からも労働者を追いやってしまうとの懸念を生じさせている。

 英オックスフォード大学(University of Oxford)が2013年にまとめた研究では、米国における700の職種のうち、自動化(オートメーション)の「大きなリスク」にさらされているのは全体の47%に上るとされた。

 米コンサルティング大手マッキンゼー(McKinsey)が今年発表した研究論文でも同様の見解が示されている。ただ、「完全自動化」となるのは、全体の約5%にとどまるとされた。

 また、英コンサルティング会社プライスウォーターハウスクーパース(PwC)による別の報告書では、2030年台初頭までに、米英独では約3分の1の職が自動化で消失するとされ、特に運輸・倉庫、製造、卸売および小売業界への影響が大きいとされた。

 だが専門家らは、こうした研究について、労働人口に対するリスクの全容を把握できていないと指摘する。

 ハイテク起業家でカーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)シリコンバレー(Silicon Valley)キャンパスで非常勤講師を務めるビベック・ワドワ(Vivek Wadhwa)氏は、「これらの研究は、技術(革新)の影響を過小評価している。今後10年から15年の間に、80~90%の職種が消失するだろう」と述べる。そして、人工知能は誰の予想よりもずっと急速に進化するとしながら、ドライバー不要の自動運転車は「労働の未来の象徴」と続けた。

 自動化が招く、社会の悲惨な結末については、英国の著名な宇宙物理学者スティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)博士(75)や米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)のイーロン・マスク(Elon Musk)最高経営責任者(CEO)らも警告を発している。

 国立エルサレム・ヘブライ大学(Hebrew University of Jerusalem)の歴史学者ユバル・ハラリ(Yuval Harari)氏は、自著「ホモ・デウス(Homo Deus: A Brief History of Tomorrow)」で、「人はアルゴリズムにより労働市場から追い出され、富と権力はごく一部のエリートの手に集中する。そして前例のない社会・政治的不平等が生まれる」と警告している。

 ハラリ氏はオックスフォード大学の研究を挙げ、自動化で消失するリスクが高い職種を推定。その確率を掲げた。その中には、現金出納係/レジ係(97%)、法律事務職員/パラリーガル(94%)、パン職人(89%)、バーテンダー(77%)などが含まれていた。