【3月28日 AFP】壊滅的な地震、洪水、あられやひょうを伴う嵐、山火事、さらに人為的な破壊による昨年の全世界の災害コストは、一昨年の940億ドル(約10兆4000億円)の2倍近い、計1750億ドル(約19兆3600億円)に上った。スイスの再保険大手「スイス・リー(Swiss Re)」が28日、発表した。

 同社によれば、昨年の災害コストのうち保険で補償されたのは、わずか約30%にすぎないという。金額では540億ドル(約6兆円)で、前年比42%増だった。

 一方、災害による死者・行方不明者の数は昨年は1万1000人で、一昨年の2万6000人を大きく下回った。

 昨年、全世界で発生した327件の災害のうち、191件が自然災害、136件が人為的な災害だった。

 4月に日本の九州で起きた熊本地震では、約50人が死亡し、また昨年の災害の中で最大となる250億~300億ドル(約2兆7600億~3兆3200億円)の損失が生じて経済的に大きな打撃を与えた。だが、このうち保険で補償された額は、約49億ドル(約5400億円)にすぎないとスイス・リーは指摘している。

 同じ4月に中米エクアドルで起きた大地震では、673人が死亡。経済的にも同様に約40億ドル(約4400億円)の損失を生じたが、保険では50万ドル(約5500万円)しか補償されていないという。

 一方、保険で補償された損失の半分以上を占めるのは保険普及率の高い北米となっている。北米で昨年発生した7つの嵐のうち、損失が最大だったのは4月にテキサス(Texas)州を襲った嵐だが、損失額計35億ドル(約3900億円)相当のうち86%が保険で補償されている。

 また最多の人命を奪ったのは、北大西洋で発生したハリケーンとしては過去10年で最大規模となった「マシュー(Matthew)」で、ハイチを中心に700人超が亡くなった。損失額は120億ドル(約1兆3300億円)に上ったが、保険で補償されたのはうち3分の1のみとなっている。

 世界各地の洪水被害も大きく、7月に起きた中国・長江(揚子江、Yangtze River)流域の豪雨では、洪水被害としては1998年以来最大の220億ドル(約2兆4000億円)の損失が生じたが、保険では40万ドル(約4400万円)相当しかカバーされていない。

 対照的に5~6月にかけて、フランスからドイツ中部、ベルギーを襲った洪水では、損失額計39億ドル(約4300億円)のうち保険で29億ドル(約3200億円)がカバーされている。(c)AFP