【3月24日 AFP】がんの原因は何か──。23日に発表された研究論文は、遺伝および環境要因ではなく、細胞分裂時に生じるランダムなミスが、腫瘍の遺伝子変異の大半を占めていることを示唆している。

 論文は米科学誌「サイエンス(Science)」に掲載された。研究論文を執筆した研究チームは、2015年1月に発表された研究で、ランダムなDNA変異、つまり「不運」が、がんの原因となる場合が多いと指摘し、賛否両論を巻き起こした。

 研究チームは今回、独自に開発したDNA配列と疫学のデータに基づく数理モデルを、世界69か国に拡張した。

 論文の共同執筆者で、米ジョンズ・ホプキンス大学シドニー・キンメル総合がんセンター(Johns Hopkins Kimmel Cancer Center)の「ルードウィクがん遺伝学・治療学センター(Ludwig Center for Cancer Genetics and Therapeutics)」共同所長、バート・ボーゲルスタイン(Bert Vogelstein)氏は、記者会見で「がんで発生する変異の3分の2は、細胞が分裂する際に起こすミスに起因している」と語った。

 論文によると、がんの変異の29%は環境が要因となっており、遺伝要因は全体の5%だという。

 ボーゲルスタイン氏は、「正常な細胞が分裂するたびに、いくつかのミスを起こす。これが変異だ」と説明。「たいていの場合、これらの変異は何の害も及ぼさない」と続けた。

 しかし、「これは通常の状況。つまりは『幸運』ということだ。だが時にこれが、がん誘発遺伝子で起きることがある。これが『不運』なのだ」と指摘した。

 今回の研究の目的は、この種の変異に関する理解を向上させ、がんを早期に発見する方法の確立につなげることだった。

 研究はまた、何ら問題の無い環境においても、がんが発症することを浮き彫りにしている。これによって、一部の患者が診断を受ける際に直面する罪悪感が和らぐ可能性がある。

 ただ、研究者らは、喫煙や過度の日光に当たることなど、がんに関する既知のリスク要因を避けることはこれまでと同様に強く求められるとしている。

 今回の研究は「がんの42%は防ぐことができるという疫学的な推計と完全に一致しており、このようながん予防ガイドラインを誰もが忠実に守るべきだ」とボーゲルスタイン氏は強調した。