「家族を食べさせたい」と語る子、ミャンマーの好景気支える児童労働
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【3月24日 AFP】サン・ミン・テイ(San Min Hteik)君(14)は製鋼所で働き始めて1週間も経たないうちに、機械に手を挟まれ重傷を負った。経済が好調なミャンマーで、工場で働く子どもたちが増加する中、起きた事故だった。
サン・ミン・テイ君は鋼棒(ロッド)切断機の操作を誤り、手の指を2本切断した。事故から数週間経過したが、医師らは他の指を残すことができるかどうか確信を持てずにいる。
半世紀にわたった軍事政権下での国際的孤立から解き放たれたミャンマーには、外国投資が一斉に流入し、急速な経済成長が進んでいる。こうした成長を支えるのは大勢のサン・ミン・テイ君のような若い工場労働者だ。
貧困にあえぐミャンマーでは、10~17歳の5人に1人が働いており、児童労働問題で最悪の国の一つに数えられる。大半の子どもたちは家計を助けるために、店舗の床清掃やカフェでのボーイやウエートレス、家事手伝いなどをしているが、中には急増する外国資本の工場で働く子どももいる。
外国からの投資によって、ミャンマーは東南アジアでも最速級の経済成長を続けており、今後数年間の経済成長率は平均7%になると予想されている。
サン・ミン・テイ君は商都ヤンゴン(Yangon)郊外モビ(Hmawbi)郡区にある自宅でAFPの取材に応じ「家族にまともな暮らしをさせたい。家族におなかいっぱい食べさせ、他の人たちと同じような服を着ることができるようにしたい」と語った。
ミャウン・ダガール(Myaung Dagar)工業団地にある中国資本の製鋼所「999」で働いていたサン・ミン・テイ君は、製鋼所からけがに対する和解金として250万チャット(約20万円)を受け取った。
母親のティン・ティン・テー(Tin Tin Htay)さんは、その和解金をサン・ミン・テイ君の医療費ときょうだい2人の通学費に充てると言うが「このお金をもらった時は悲しかった。このお金で息子の手を買おうとしているみたいで」と語った。
AFPの記者らは製鋼所「999」を訪れたが、立ち入ることはできなかった。電話で応対した従業員は、コメントできる人は誰もいないと答えた。
サン・ミン・テイ君の製鋼所との和解を支援した地元労働組合のリーダー、サン・ウィン(San Win)さんによると、多くの親が家計の助けとするためにわが子を働きに出しているという。サン・ウィンさんは「わが子を働きに出すなと言うつもりはない。家庭にはそれぞれの事情がある」と語った。