【3月19日 AFP】イラク軍の精鋭部隊は18日、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」から北部モスル(Mosul)を奪還する軍事作戦で同部隊はISが「カリフ制国家」の樹立を宣言したモスク(イスラム礼拝所)まで迫ったと明らかにした。

 イラク軍は既に今年1月、チグリス川(Tigris River)で東西に分かれたモスルの東部奪還に成功。先月19日に、イラク都市部におけるIS最後のとりでであり旧市街を有する西部の奪還作戦を開始した。西部は東部よりも面積が狭く人口が密集している。

 イラク内務省傘下にある即応部隊の司令官らは、旧市街は人口が密集し路地が入り組んでいるため進撃の速度は遅いが中心部で新たな成果をあげていると語った。

 同部隊のフィラス・ズワイディ(Firas al-Zuwaidi)報道官によると、同軍はISの最高指導者アブバクル・バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi)容疑者が2014年7月に「カリフ制国家」の樹立を宣言したヌーリ・モスク(Al-Nuri Mosque)から800メートルの距離まで接近したという。ISが主張した「カリフ制国家」はイラクとシリアの国境をまたぐ広域を支配下に置くとするもの。バグダディ容疑者はこの時以降、公には姿を見せていない。

■住民数万人が今も市内に

 迫撃砲の音がとどろくモスル中心部で取材に応じたズワイディ報道官は、作戦は悪天候や軍車両の進入が困難な狭い路地など数々の困難に直面しているとしたうえで、あらゆる路地と家屋をシラミつぶしに戦闘を続けていると語った。

 これまでにイラク軍はモスル西部の奪還作戦で空港、鉄道駅、州政府庁舎やモスル博物館(Mosul Museum)などの重要施設を次々と奪還してきた。イラク第2の都市であるモスルが陥落すれば、イラクおよび隣国のシリアでも相次いで撤退を余儀なくされてきたISには大きな打撃だ。

 だが旧市街での戦闘が奪還作戦の中でもとりわけ困難なものになることは予想されていたうえ、ISの支配下で同地区内にとどまった数万人の市民の存在がさらに作戦の進攻を複雑にしている。

 イラク当局によれば、これまでに市民約15万人がモスル西部を逃れて同市近くに設置されたキャンプに避難した。市民らには食料、毛布、マットレスなどが支給されているという。(c)AFP/Tony Gamal-Gabriel with Edouard Guihaire in Baghdad