【5月5日 AFP】薬物依存症患者だったフェルナンド・リベラ(Fernando Rivera)さん(24)は、メキシコ市(Mexico City)の貧しく、暴力が絶えない郊外の街で地獄のような青春時代を過ごした──そんな状況から彼を救い出したのは「アート」だった。

 過去に依存者のためのリハビリ施設に入所していたことがあるというリベラさん。その後、アートと工芸のネットワーク「FARO」にたどり着いた。FAROは、市内にあるアート関連施設を結ぶネットワークで、薬物や暴力にまみれた生活から、リベラさんのような若者を数千人と救ってきた。FAROは、スペイン語で灯台を意味する。

 スカル(どくろ)のデザインがあしらわれたマスクを笑顔で見せてくれたリベラさん。スプレー缶を使って絵を描く時に使うのだと説明した。FAROとの出会いは「難破した船がやっと避難場所を見つけたようなものだ」と語った。

 FAROは、首都メキシコ市郊外のサンタ・マルタ・アカティトラ(Santa Martha Acatitla)地区の倉庫街にある。以前は、犯罪に巻き込まれた犠牲者の遺体がしばしば発見されるような場所だった。

 FAROが無償で提供するアートや工芸、演劇や文学のワークショップには、地元市民約2000人が参加している。リベラさんがここで初めて写真のコースを受講したのは6年前。以降、メキシコの地方の風習を撮影するため国内各地を旅している。

 そして、その体験から社会人類学に興味を持つようになり、現在は大学レベルで学んでいる。FAROがなければまったく違う人生になっていたとAFPの取材にコメントした。