【3月15日 AFP】中国で大気汚染の原因となる微小粒子状物質の大気中含有量を国連(UN)の推奨基準まで引き下げれば、年間300万人の早死にを防ぐことができるとの研究論文が15日に発表された。

 医学誌BMJに掲載された研究論文によると、中国の38の大都市における2010年1月~2013年6月までの大気中の微小粒子状物質の濃度は、1日平均1立方メートル当たり約93マイクログラムだった。世界保健機関(WHO)の基準値1立方メートル当たり20マイクログラムをはるかに上回る数値だ。

 計測の指標として用いられたのは、いわゆる「PM10」と呼ばれる粒子状物質。人の髪の毛より数倍細く、直径は10ミクロン以下、つまり、1メートルの1000万分の1以下の微粒子だ。また、より小さな「PM2.5」も大気汚染を測る基準として知られている。

 石炭や石油の燃焼、森林火災、火山噴火や砂塵(さじん)嵐などから生まれる微小粒子状物質は、大気中に浮遊し、呼吸器疾患を引き起こす。研究者らによると、調査対象とした38都市での3年半に及ぶ研究で報告された死亡事例は35万人以上に及んでいる。

 研究者らは、1日のPM10濃度が1立方メートル当たり10マイクログラム増加するにつれ、ぜんそくや慢性肺疾患など、主に心肺の疾病が原因で1日当たりの死亡率が0.44%上昇すると推測している。研究結果を中国全体に当てはめて計算すると、1日当たりのPM10濃度をWHOの基準値に下げれば、早死にする人を控えめに見積もっても「年間300万人救える」ことになるという。

 大気汚染が最も深刻な国としては、中国とインド、イラン、インドネシアなどが挙げられるが、例えば、インドのニューデリー(New Delhi)は、PM10濃度が1立方メートル当たり700マイクログラムを超えている。(c)AFP