60年前に去った残留元日本兵の夫、愛を守り続けるベトナム人の妻
このニュースをシェア
■日本へ連れ帰れなかった妻子
長らくフランスに植民地支配されていたベトナムは、第2次大戦中の1940年から1945年まで日本の占領下にあった。スアンさんがシミズに出会ったのはそのさなかの1943年だった。まもなく2人は結婚。若い夫婦はささやかなうたげを開き、ビスケットと菓子で招待客をもてなした。
第2次大戦での日本の敗戦後、約700人の日本兵が現地にとどまり、その大半がフランスからの独立を目指して戦っていたベトナムの革命家リーダー、ホー・チ・ミン(Ho Chi Minh)に加勢した。1954年にフランスが敗戦すると、シミズは日本政府が最初に出した帰国命令の対象となったが、ベトナム人の妻やその間に生まれた子どもたちを連れて帰ることは認められなかった。
スアンさんは、1954年に去った後の夫の消息については知らなかったが、悲しい別れから52年後の2006年、日本のジャーナリストらを通じて再会を果たした。夫は再婚していたが、スアンさんは独身のまま、看護師やベビーシッターをしたり、農場で働いたりしながら子どもたちを育てた。
しかしスアンさんは、夫が「とても素敵な男性」だったことを忘れていない。「彼が私のためにと残していった軍服で枕を作り、それを(ベトナム)国旗で覆った。星になった夫を想像した」。軍服の赤と金の飾りを指しながら、スアンさんはほほ笑んでそう語り「そうすれば、眠っている間ずっと彼が一緒にいてくれるから」と語った。(c)AFP/Tran Thi Minh Ha