【2月13日 AFP】(更新、写真追加)世界報道写真財団(World Press Photo Foundation)は13日、優れた報道写真に贈る2016年の「世界報道写真大賞(World Press Photo Award)」に、AP通信(Associated Press)のカメラマン、ブルハン・オズビリジ(Burhan Ozbilici)氏が撮影したロシアの駐トルコ大使殺害事件の衝撃的な写真を選出した。AFPのカメラマン3人も入賞した。

 トルコの首都アンカラ(Ankara)で開かれた展覧会の開会式の場で撮影されたその写真には、ロシアのアンドレイ・カルロフ(Andrei Karlov)駐トルコ大使に9発の弾丸を撃ち込んで死亡させた、メブリュト・メルト・アルトゥンタシュ(Mevlut Mert Altintas)容疑者(22)の姿が捉えられている。

 オランダ・アムステルダム(Amsterdam)に本部を置く同財団の審査員らは、オズビリジ氏の度胸と勇敢さをたたえた。

 オズビリジ氏はAFPに対し、「銃声を聞いた瞬間から、これは歴史的な瞬間であり、非常に深刻な状況だと分かっていた」「職務を果たさなければと思った。ジャーナリストとして、命拾いするためにただ逃げ出すことはできなかった」と当時を振り返った。

 同氏撮影の鮮烈な写真は世界中に配信され、閲覧数は約1800万回に上った。

 一方で審査員らは、世界125か国、5034人のカメラマンから提出された8万400枚以上の写真の中から今年の大賞を選ぶのは困難だったと認めた。

 審査員の一人、メアリー・カルバート(Mary Calvert)氏は、「非常に難しい選択だった。だが最終的に今年の一枚は、われわれの時代の憎しみをはっきりと映し出した強烈な写真だと感じた」と明かした。

 1989年からAP通信に所属し、トルコでのクーデター未遂や、シリア・リビア・エジプト取材も敢行してきたオズビリジ氏は、「良き行いをしたいという思いで、不正や堕落によって腐敗した世界と対峙(たいじ)する勇気を持つ」という難題に常に備えておこうとしてきたと話し、「この写真は、トルコの歴史における重要な瞬間を切り取った」と語った。

 また、亡くなった大使を「気取らず親切で誠実な人物」と呼び、その死は「シリアの大惨事」の直接的な結果であり、気の毒だと述べている。

 この他、フィリピンにあるAFPマニラ(Manila)支局のノエル・セリス(Noel Celis)氏は、過密状態の拘置所の中でひしめき合いながら眠ることを強いられた収容者たちを撮影した写真で「一般ニュース」部門で3位に。

 AFPのシリア人カメラマンのアブド・ドゥマニ(Abd Doumany)氏とアミール・アルハルビ(Ameer Alhalbi)氏は、アレッポ(Aleppo)とドゥマ(Douma)で戦火に巻き込まれた子どもたちを捉えた写真で「スポットニュース」部門2位に選出された。ドゥマニ氏は昨年も「一般ニュース」部門で入賞を果たしている。

 審査員長を務めた英国人カメラマンのスチュアート・フランクリン(Stuart Franklin)氏はAFPに対し、「(シリアでの撮影は)非常に大きなリスクを伴うが、若い彼らは悲惨な状況を伝えてくれている」と語った。(c)AFP/Sophie MIGNON