【2月22日 AFP】冷たい風が吹きつけ、降り積もった雪を雨がゆっくり溶かしていく。北極(Arctic)に近いアイスランド。住み慣れたシリアの首都ダマスカス(Damascus)から遠く離れた地にありながら、ジュムア・ナセル(Joumaa Naser)さん一家が極地の寒さを気にする様子はない。安全に暮らせるだけで十分幸せなのだ。

 火山と氷河、間欠泉に囲まれて33万人が暮らすアイスランドは、内戦を逃れたシリア難民の移住先としては珍しい国だ。それでも2015年以降、118人のシリア人がこの島国での穏やかな新生活に希望を見いだしてきた。

 彼らの大半は首都レイキャビク(Reykjavik)かその周辺に移り住んだが、中には北極圏(Arctic Circle)の南70キロほどにある北部の町アークレイリ(Akureyri)で新たな生活を始めた人たちもいる。ナセルさんもその一人だ。

 そして今、彼と妻、5人の子どもたちは、アークレイリを「ふるさと」と呼んでいる。

 アイスランド政府はナセルさん一家に対して、1年間の家賃のほか、生活費も支給している。さらに赤十字(Red Cross)は、アイスランドの言語や文化を学べる講座の授業料を提供している。

 きれいに整えた口ひげをたくわえ、ダウンジャケットを着込んだナセルさんはAFPの取材に、北欧の気候などには適応していけるが、唯一の悩みの種がアイスランド語の習得だと語る。「言葉だけは少々複雑です。完全にものにするには時間がかかるでしょう」

 もっとも、子どもたちは友だちやサッカーなどのスポーツを通じて新たな母国になじみ、アイスランド語も父親より速く習得しているという。