【2月8日 AFP】バチカン市国が2日間にわたって開催している違法な臓器売買に関する会議に中国の臓器移植制度の責任者を招いたことに対し、倫理問題の専門家や人権派の弁護士らから7日、非難の声が相次いだ。中国は今なお死刑囚の臓器を移植手術に供給していると懸念されているが、同国政府としては、そうした慣例を廃止したことを全世界にアピールする狙いがあるとみられている。

 ローマ法王庁科学アカデミー(Pontifical Academy of Sciences)が会議に招待したのは、中国人体器官捐献与移植委員会(China Organ Donation Committee)の主任委員で元衛生省次官の黄潔夫(Huang Jiefu)氏。

 中国では2007年に臓器売買を禁じる条例が初めて施行されたが、深刻なドナー(臓器提供者)不足に陥っているため、非合法の臓器売買が今なお一般的に行われている。また2015年には死刑囚の臓器を移植手術に使用することが禁止されたが、法の網をかいくぐって死刑囚を自発的なドナーとして登録し直しているのではないかと国際医療団体からは現状を疑問視する声が上がっている。

 黄氏は以前、中国で死刑囚の臓器が移植手術に使用されていることを認めていたが、2010年に同国で公式な臓器提供制度が導入されてからはそのような実態はないと主張してきた。

 7日付の国営英字紙・環球時報(Global Times)の報道によれば、黄氏は「権威ある国際機関が主催する臓器売買についての会議に中国が招かれるのはこれが初めてだ」と述べている。

 一方、豪マッコーリー大学(Macquarie University)の医療倫理問題の専門家で中国の臓器窃盗問題に取り組んでいるウェンディ・ロジャース(Wendy Rogers)氏は、今回、黄氏がローマ法王庁科学アカデミー主催の会議に招かれたのは「衝撃的だ」と非難した。

 ロジャース氏らは同アカデミーに書簡を送り、ローマ法王庁は「たとえ間接的にせよ、名誉ある外国の機関からの承認が中国のプロパガンダに利用されることに自覚的であるべきだ」と異議を表明した。(c)AFP