【1月17日 AFP】太平洋に最後に残った伝統航海士の一人が、マーシャル諸島(Marshall Islands)の首都マジュロ(Majuro)で亡くなった。伝統航海術を継承する道半ばで倒れ、若い世代が習得し切れていない技術が多数あるという。

 太平洋に浮かぶ島々の住民は数千年もの間、地図や羅針盤といった航海道具は使わず、代わりに波の動きや夜空の星を頼りに遠く離れた環礁の間を船で行き来してきた。

 古代から伝わるこうした航海術は、最近公開されたディズニー(Disney)のミュージカルアニメ映画『モアナと伝説の海(Moana)』でも取り上げられた。68歳で亡くなったコレント・ジョエル(Korent Joel)さんは、こうした技術を極めた熟練の船長の一人だった。

 ジョエルさんは、自分が死んでも伝統的な航海術が後世に残るようにと、非営利団体(NPO)「マーシャル諸島のカヌー(Waan Aelon in MajelWAM)」と共に後進への指導を行っていた。

 ジョエルさんの知識は、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)などのメディアでも取り上げられたことがある。同紙は「理論的にいえば、伝統航海士たちは、マーシャル諸島の海域に浮かんだ船に目隠しされた状態で投げ込まれても、航海目標となる特有の形状の波を頼りにするだけで、目的の島へ向かうことができるだろう」と伝えている。(c)AFP