【1月17日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)次期米大統領が北大西洋条約機構(NATO)を「時代遅れ」と形容し、欧州連合(EU)から英国に続きより多くの国が離脱するだろうとの見解を示したことに対し、ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相やフランスのフランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領ら欧州の指導者が16日、相次いで反論した。

 トランプ氏は英紙タイムズ(The Times)と独紙ビルト(Bild)のインタビューに応じ、欧州に対する激しい口撃を展開。メルケル首相については、国境をシリア難民に開放するという「破滅的な」決断を下したと批判した。

 また対ロシアでは、「良い取引ができるか様子を見たい」と発言。核兵器の削減と対ロ制裁の緩和に向けた取引を交わす意向を示唆した。

 さらにトランプ氏は、自身がこれまで頻繁に称賛してきたロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領よりもメルケル氏を信頼していると言明することを避け、「両者を信頼することから始める──だがそれがいつまで続くかは様子見だ。全く長く続かない可能性もある」と発言した。

 こうした発言を受け、欧州では同氏の欧米間の同盟関係に対する考えやロシア寄りの姿勢に対する懸念が広がっている。

 トランプ氏からの批判について記者会見で質問を受けたドイツのメルケル首相は、「われわれ欧州人の運命はわれわれの手中にある」と言明。さらに、テロと難民という2つの問題を混同したトランプ氏の見解は間違いだと指摘した上で、EUが経済を強化しテロと戦っていけるよう尽力する意向を表明した。

 またフランスのオランド大統領も、パリ(Paris)で開かれたジェーン・ハートリー(Jane Hartley)駐仏米大使の離任式の場で、あからさまな不快感を表明。「ここで言っておく、欧州は対米協力を常に積極的に追求していく構えだが、その道のりは欧州独自の利益と価値観に基づいて決めていく」とくぎを刺し、EUの内政に「外からの忠告は必要ない」と切り捨てた。

 欧州委員会(European Commission)のフェデリカ・モゲリーニ(Federica Mogherini)副委員長(EU外交安全保障上級代表)は、EU離脱国が増えるというトランプ氏の見解を一蹴。「EUは団結を強めると思う──私は100%確信している」と断言した。

 ドイツのフランクワルター・シュタインマイヤー(Frank-Walter Steinmeier)外相は、NATOのイエンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長との会談後、記者団に対し、「次期米大統領のインタビュー発言は、確かにここEU内に驚きと動揺を招いた」と認めた。

 その一方でNATO報道官は、ストルテンベルグ事務総長がトランプ氏によるNATO関与を「絶対的に確信している」と伝えている。(c)AFP