大麻の鎮痛効果、一方でリスクも 全米科学・工学・医学アカデミー報告
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【1月13日 AFP】大麻関連薬物からは安全に鎮痛効果が得られるとされるが、患者の健康や安全上のリスクについては不確実な点が残っていると、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)の新論文が指摘している。
同アカデミーの委員会は、1999年以降に発表された1万本以上の関連論文を「厳密に再検討」し、100点近い結論を引き出したと声明で述べた。
最近の全米調査では、12歳以上の米国民2200万人以上が、過去30日間にこの薬物を使用したことが示されている。使用したと答えた成人の90%については嗜好(しこう)品としての使用で、医療目的だけの使用はわずか10%だった。
同委員会の委員長で米ハーバード大学(Harvard University)教授のマリー・マコーミック(Marie McCormick)氏は「大麻関連薬物の健康への影響についてまとまった知識がないために、その使用に有益性と有害性があるとすれば、それが何であるのか確かでない」と述べ、そうした状況への対処が報告の目的だと語った。
報告によると、慢性疼痛(とうつう)の治療に使用した患者は、痛みの症状の大幅な軽減を経験した割合が高かった。また多発症硬化症関連の筋けいれんも、ある種の「径口カンナビノイド」、すなわち大麻の成分カンナビノイドを基にした製薬の使用で症状が改善した。さらに、化学療法で治療中のがん患者の吐き気や嘔吐(おうと)の予防と治療について、こうした径口カンナビノイドの有効性についても確証が得られた。
だが、大麻関連薬物使用のリスクの中には、心臓発作の引き金となる可能性が含まれている。ただし心臓発作や卒中、糖尿病との関連についてはさらに研究が必要だ。
一方、精神衛生との関連については、同委員会は「大麻関連薬物の使用は統合失調症および他の精神障害、社会不安障害、また低度のうつ病を発症するリスクを高める可能性がある」ことが分かったとしている。大麻関連の常習者の間では自殺願望が強まったり、双極性障害の症状が悪化したりする可能性がある。
しかし、統合失調症および他の精神障害がある人たちの中では「大麻関連薬物使用の履歴は学習・記憶作業の成績向上につながる可能性がある」ともいう。
一方、大麻関連薬物の使用が、他の薬物の使用開始率を高めるという説については、証拠は限定的だった。
また妊娠中の女性の大麻関連薬物の吸引と、低体重児の出産が関連付けられる証拠が一部あるとされる。だが、妊娠期と小児期に関するその他の結果との関連は不明だ。(c)AFP/Jean-Louis SANTINI