【1月10日 AFP】1980年にオーストラリアの観光名所である巨大な一枚岩ウルル(Uluru、エアーズロック、Ayers Rock)で、当時生後9週間の娘を野生犬に連れ去られたことで世間の注目を集めたマイケル・チェンバレン(Michael Chamberlain)さん(72)が死去した。マイケルさんの家族が10日、発表した。

 報道によると、マイケルさんは急性白血病による合併症を患い、亡くなった。元妻のリンディ(Lindy Chamberlain)さんは報道陣に対し、マイケルさん家族への配慮を求める声明を発表した。

 1980年に夫婦だったマイケルさんとリンディさんがウルル近くでキャンプをしていた際、娘のアザリア(Azaria Chamberlain)ちゃんがテントからいなくなり、行方不明となった。リンディさんは一貫して、ディンゴ(オーストラリアに生息する野生の犬)が娘を連れ去ったと主張していたが、殺人罪で有罪となり服役した。

 マイケルさんも共犯の罪で執行猶予付きの有罪判決を受け、以降数十年にわたって妻と自らの無実を訴えた。

 1988年になってディンゴの巣の近くでアザリアちゃんの衣服の切れ端が見つかったことで、2人に対する有罪判決は覆され、2012年には野生犬がアザリアちゃんを連れ去ったとする正式な検視結果が下された。

 この事件は1998年、米女優のメリル・ストリープ(Meryl Streep)さんと英国出身の俳優サム・ニール(Sam Neill)さん主演で『ア・クライ・イン・ザ・ダーク(A Cry in the Dark)』というタイトルで映画化され、その後書籍やテレビシリーズ、さらにはオペラの題材としても取り上げられ、世界中で大きな注目を集めた。

 ニールさんはマイケルさんの死にあたり、ツイッター(Twitter)で「つらい試練と幾年にもわたる不当な扱いを終始受けながら、心に秘めた威厳を保ち続けた」と追悼のメッセージを送った。(c)AFP