巨匠の筆遣いに神経疾患の兆候、早期診断の一助に 研究
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【12月30日 AFP】絵画界の巨匠であるサルバドール・ダリ(Salvador Dali)やウィレム・デ・クーニング(Willem de Kooning)ら、神経変性疾患を患っていたことで知られる画家の作品を分析した結果、筆遣いの変化を病気の早期診断に役立てられる可能性があることが分かったとの研究結果が、29日に発表された。
研究チームは、パーキンソン病を患っていたスペイン出身のダリやカナダ先住民画家ノーバル・モリソー(Norval Morrisseau)、アルツハイマー病を患っていたオランダ出身のデ・クーニングや米画家ジェームス・ブルックス(James Brooks)の作品を含む絵画2029点の分析を実施。
比較対象として、これらの疾患がなかったとされるマルク・シャガール(Marc Chagall)やパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)、クロード・モネ(Claude Monet)の作品も加え、絵画の真贋(しんがん)鑑定でのパターン分析に使用されるフラクタル解析を用いて作品の相対的複雑性を計測した。
分析の結果、デ・クーニングとブルックスについては、アルツハイマー病と診断されるずっと前の40歳前後で複雑性の明らかな低下がうかがえた。デ・クーニングが正式な診断を受けたのは85歳を迎えた1989年、ブルックスは79歳の時だった。
ダリとモリソーについては、複雑さを示す「フラクタル次元」が中年期に増加した後、50歳代後半に減少していた。ダリは76歳で右手に重度の震えが出始め、薬物が原因のパーキンソン病と診断された。モリソーが同病の診断を受けたのは65歳の時だった。
一方、シャガール、モネ、ピカソでは、老年期に入ってからも複雑性が高まっていた。
研究に参加した英リバプール大学(University of Liverpool)のアレックス・フォーサイス(Alex Forsythe)氏は、認知症の場合、人々は記憶力の低下を気にするが、今回の研究結果から、記憶力低下が起きるずっと以前から「何かが起きている」ことが示されたと指摘している。
論文は、アイルランド国立大学メイヌース校(Maynooth University)のローナン・ライリー(Ronan Reilly)氏と、英国民保健サービス(NHS)のタムシン・ウィリアムズ(Tamsin Williams)氏らが共同執筆し、米国心理学会(APA)の医学誌ニューロサイコロジー(Neuropsychology)に掲載された。(c)AFP