紛争で「老成」した子が子どもに戻るには遊びの時間が必要 イラク
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【12月28日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」による支配と紛争が何年も続いているイラクで、過酷な体験によって「老成」してしまった多くの子どもたちがトラウマ(心の傷、心的外傷)を乗り越えるために強く必要としているのは遊びの時間だ。
ハサンシャム(Hasansham)国内避難民キャンプで黒いコートを着てしゃがんでいたマラク(Malak)さん(11)は、「地獄から戻ってきた」と話した。同キャンプでは、イラク軍がISからの奪還作戦を進めているモスル(Mosul)から避難してきた人々が大勢生活している。
国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)のモーリド・ワルファ(Maulid Warfa)さんは、このキャンプで子どもたちは授業と遊び時間の合間に「もう一度子どもに戻っていくのだ」と話した。「子どもたちは破壊や死、大きな爆発を目にし、激しい戦闘をくぐり抜けてきました。こうしたすべての体験が、子どもたちの心の健康や社会福祉の面で影響を与えています」
多くの子どもたちにとって、子どもとしていられる時期は短い。近親者を亡くし、自宅からの避難を余儀なくされた貧しい家族を支えるためにさまざまな手伝いをしなくてはならないからだ。
2014年にISに故郷を制圧されて以来、多くの子どもたちが正規の学校に通えずにいる。モスル近郊のマラクさんの村にもISが運営する学校はあるが、学費が高く、また女子は長くて黒いベールの着用を義務付けられている。「将来エンジニアや医者になれそうなことは全然教えてくれません。教わるのは『銃1丁足す銃1丁は銃2丁』。こういうことだけ」
かつてのイラクは、子どもの医療と教育に関しては中東諸国をリードする存在だった。だがユニセフによると、今日のイラクでは、少なくとも子ども3人に1人が人道援助を必要とし、学校に通っていない児童は350万人以上に上る。
フェイサル(Faysal)君(11)は、家族と共に自宅からモスルの町外れの親戚宅に避難しなければならなくなった「爆発、飛行機、爆弾」のことが今でも忘れられないと打ち明けた。「音がずっと続いていて、ぼくたち、眠ることもできなかった」と語る少年の目は絶えず動き続けていた。
国際児童保護NGO「テールデゾム(Terre des Hommes)」の心理学者、スズダル・サレー(Suzdar Saleh)さんは、音は子どもたちの治療で必ずテーマになる問題だとして、「時々、上空を飛ぶ飛行機の音が聞こえると、子どもたちは、またあの体験が始まるのだと思ってしまうのです」と説明した。子どもたちはトラウマを乗り越えるために、心の内を吐き出すことが必要だとサレーさんは指摘する。「話をすることで、抱えている苦しみの一部を押し出せるからです」
フェイサル君は「幸せだよ」と話した。「今は眠れるから」 (c)AFP/Sarah Benhaida