【12月28日 AFP】韓国の有名画家、故・千鏡子(Chun Kyung-Ja)作品の真贋(しんがん)をめぐる論争で、フランスの絵画専門家らは27日、科学的調査に基づき作品を「偽作」と判断した報告書が発表されているにもかかわらず、これを無視して本物と結論付けた韓国の検察当局を厳しく非難した。

 韓国の国立現代美術館(National Museum of Modern and Contemporary Art)が所蔵する1971年作の肖像画「美人図」は、昨年91歳で亡くなった千氏本人が偽作であると繰り返し主張していた。一方で国立現代美術館側も本物との主張を譲らなかったため、今年4月に検察当局による調査が開始されていた。

 検察当局は先週、科学的な鑑定の結果および専門家らの意見を引用しながら美術館側の主張を認め、同作品の来歴も解明したと発表。「美人図」は韓国情報機関の前部長がかつて所有していたが、1979年の朴正熙(パク・チョンヒ、Park Chung-Hee)元大統領の暗殺で同部長が処刑された後には、国が所有するかたちとなっていたとした。

 千氏の作品は、韓国の伝統的なスタイルとは一線を画するもので、鮮やかな原色を多用した女性像や花の絵画が最もよく知られている。最近の競売では、70万ドル(約8200万円)~100万ドル(約1億1700万円)で取引されている。

 仏パリ(Paris)の光学系ハイテク企業のルミエール・テクノロジー(Lumiere Technology)は、同作品と千氏の本物の9作品の「徹底的な」比較調査を行い、全63ページの報告書を発表した。報告書では、科学技術を駆使した鑑定の結果、「美人図」は「明白な偽物」であると結論付けられた。

 しかし、検察当局は先週、作品を本物と判断。これについてルミエール社は、科学的な調査によって導き出された結果を「完全に無視し」「裏付け証拠のない発言と見解」に基づいた結論と指摘。「検察当局が経験的証拠を否認することは、ある男性についての実父確定検査でのDNA鑑定結果が、別の男性との関係はないことから男性は子どもの親だとする母親の証言により無視されることと同類だ」と述べた。(c)AFP