【12月27日 MODE PRESS】今や定番となったショーのライブストリーミングに、SNSを活用したコミュニケーション、eコマースなど、ファッション×デジタルの取り組みは日々驚くべきスピードで進化している。

 しかし、いまだにオフィスでは郵便物やファックスなどの印刷物が飛び交い、手書きのサンプル貸出票をもとに担当者が手入力でレポートを作成するような、アナログかつ非生産的なシチュエーションも多い。また、インフルエンサーマーケティング需要が高まる一方で、キャスティングや効果測定に悩むPR担当者も少なくないだろう。

 そんなファッションの現場に、テクノロジーを駆使したワンストップサービスで変革をもたらしたのが、現在約60か国の業界関係者が利用するニューヨーク発のデジタルプロモーションシステム「ファッション GPS(Fashion GPS)」だ。

 国内のファッションPR分野において長年の歴史とノウハウを持つ双葉通信社とタッグを組み、今年12月には待望の日本語版をスタートするなど、グローバルに躍進を続ける「ファッション GPS」。そのビジョンを、同サービスを傘下に置く「ローンチメトリックス(Launchmetrics)」のエディ・ムロン(Eddie Mullon)社長とマイケル・ジャイス(Michael Jais)CEOに聞いた。

(c) Fashion GPS

■“ローンチ”の瞬間を支援

 ウェブコンサルタントとして活躍していたムロン社長が、クラウド創世記だった2006年にサンプル管理システムとして立ち上げた「ファッション GPS」は2015年に、ジャイスCEOが創業したデジタル・マーケティング企業「オーグル(Augure)」と経営統合し、「ローンチメトリックス」傘下のサービスとして新たに舵をきった。

 スタート以来10年間にわたりファッション業界とともに歩んできたムロン社長は、「ファッションビジネスにとって、最も重要なのは“ローンチ”の瞬間」だと考える。「商品をローンチできるのは、一度きり。そのチャンスを最大限に活かすためのサービスとは何かを、常に考え、開発に取り組んできた」

 そんな“ローンチ”の瞬間を支えるサービスの柱は3つ。商品サンプルをバーコードで管理し、社内外への貸出や返却作業、メディア掲載などのデータをクラウド化する“サンプル”、オンライン招待状の送付から出欠確認、座席表の作成、チェックイン確認、動員レポートまで、イベントに関する一連の作業をデジタル化する“イベント”、ショーや製品のオフィシャル画像、プレスリリースなどの素材をクラウド上で管理・公開するオンライン・ショールーム“ギャラリー”。

 さらに、プレスやバイヤー、セレブリティなど世界各国4万人以上の業界のキーパーソンが登録するコミュニティー“ファッション GPS レイダー”を構築。登録者は、“ファッション GPS レイダー”のアプリやPCサイトを通じて、上記のサービスを簡単に利用でき、ブランドや代理店側も利用データを通じて動向などを簡単にトラッキングできる仕組みだ。

(c) Fashion GPS

「一連の業務を効率化し、可視化することでローンチのスピードを早める。そして、集約したデータを分析し、インフルエンサーと繋げることでローンチ時の露出を最大化する。これを同時に叶えるひとつのソリューションが、『ファッション GPS』なんだ」とジャイスCEO。

 部署ごとに散らばるデータを一か所に集約し、社内で共有することで、深い分析が可能になる。ムロン社長も「発表会やサンプルに対する反響を計測し、自分たちのコミュニケーションがどう認知されたか、その効果をしっかりと把握することが重要。データは、次のアクションや商品開発に結びついてこそ、価値があるものだから」と続ける。

 現在は、「ディオール(Dior)」をはじめ、「ヴィクトリアズ・シークレット(Victoria's Secret)」などのブランドを担当する大手ファッション代理店「KCD」、ニューヨーク近代美術館(MoMA)など、計250以上の世界的企業にサービスを提供。ニューヨークで開催されるビッグブランドのショーの約90%の運営に、同社の“イベント”サービスが使われているという。

 しかし、ターゲットは大企業だけではない。「例えば社員が10人だけの会社でも、このサービスを使えば追加で10人を雇ったような変化をもたらすことができる」とムロン社長。「アナログな作業を効率化することで、人間にしかできない知的でクリエイティブな仕事に、貴重な時間をあてられるんだ」

(c) Fashion GPS

■最先端のインフルエンサー分析

 また、高度なデータ分析によってヨーロッパのデジタル・マーケティング界を牽引してきた「オーグル」と2015年に経営統合したことも、「ファッション GPS」の強みだ。両社の親会社である「ローンチメトリックス」には、約30人の専属データサイエンティストが在籍する。

 例えば、インフルエンサーの影響力を計る際は、「ツイッター(Twitter)やフェイスブック(Facebook)、インスタグラム(Instagram)、スナップチャット(Snapchat)、ブログなど、各インフルエンサーが持つすべてのアカウントを統合したうえで、プロファイリングするシステムがある」とジャイスCEO。そうすることで、単一のSNSに左右されない、客観的な判断が可能になるのだという。

 プロファイリングすることで、アプローチすべきインフルエンサー像も明確になる。ジャイスCEOによると、「SNS上でアクティブに活動し、周囲に影響を持つ人――例えばツイッター上に2000人以上のフォロワーを持つ人は、世界中で2億人」も存在するそうだ。「彼らは、ケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)のような業界を牽引するトレンドセッターとはジャンルが違うが、属するコミュニティーに対してセレブより大きな影響力を持っている場合もある」。より広範囲の認知を狙うのか、一定の層に親しみを持ってほしいのか――その目的にあわせたインフルエンサー選びのサポートができるのも、10年以上にわたる実績があってこそだ。

■日本進出のビジョン

 また、春夏と秋冬の年2度のコレクション発表という伝統的なカレンダーを追わないビッグブランド変化が起き、シーズンレスやジャンルレスといった流れが起きている今こそ、「アジア発のブランドに、海外進出の大きなチャンスがある」とムロン社長。「日本を訪れるたびに新人デザイナーの作品をチェックしているが、日本のブランドはどれもクリエイティブでユニーク。カレンダーに縛られなくてもいい今の時代だからこそ、国内のみに目を向けず、『ファッション GPS』のコミュニティーを通じて世界に魅力をアピールしてほしい」

 同時に、日本でのコミュニティー開拓も推し進めていく。「2017年には、双葉通信社とともに日本国内にいる何千人ものインフルエンサーにアプローチし、ファッション GPS レイダーをさらに充実したコミュニティーへと成長させたい」とジャイスCEOは展望を語る。さらに、日本を足掛かりに、中国やシンガポール、香港などアジア各国への進出も視野に入れているという。

 世界のファッション業界をプラットフォーム上でひとつに結び付けるその日まで、「ファッション GPS」の挑戦はまだまだ続く。

■関連情報
・ファッション GPS公式サイト:http://launchmetrics.jp/
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