【12月20日 AFP】国際サッカー連盟(FIFA)は19日、2018年W杯ロシア大会(2018 World Cup)欧州予選で、戦没者を追悼する赤いポピーの腕章をつけたとして、イングランドに罰金4万5000スイスフラン(約515万円)を通告。さらに、同様の追悼を行ったスコットランドとウェールズにそれぞれ2万スイスフラン(約230万円)、北アイルランドに1万5000フラン(約170万円)の罰金を科した。

 FIFAの規則では、公式戦でユニホームに「政治的」なシンボルをつけることは禁じられているが、英国の各代表チームは規則違反を否定。イングランドサッカー協会(FA)は、今回の罰金に異議を唱える意向を示した。

 先月11日にウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)でイングランドが3-0で勝利した試合では、同国の選手やギャレス・サウスゲイト(Gareth Southgate)監督と同じく、対戦相手のスコットランドも赤いポピーのモチーフをあしらった黒い腕章をつけていた。

 この日は、第1次世界大戦(World War I)の休戦記念日(Armistice Day)に当たり、英国では戦没者を追悼するのが習わしとなっている。

 FIFAのクラウディオ・スルサー(Claudio Sulser)倫理委員長は、処分について、「特定の記念日への批判や疑問を意図したものではなく、それぞれの国や人々がたどってきた歴史や背景を大切にする気持ちを全面的に尊重する」と強調。しかし、罰金を科した理由は、「FIFAに加盟する211協会は中立かつ公平な立場に基づいて、規則を順守していかなければならない」と説明した。

 選手が着用するものに関して、FIFAの規則では「政治的、宗教的あるいは個人的なスローガンをはじめ、声明や画像」を示すことは禁じられている。

 しかしながら、英文化・メディア・スポーツ省の議長を務めるダミアン・コリンズ(Damian Collins)下院議員は、AFPの取材に対し、FIFAは自らの規則を正しく適用していないと指摘した。

 FIFAを改革するためのロビー団体「FIFAナウ(FIFA Now)」の創設者でもある42歳の同議員は、「FIFAは自分たちを悪い立場に追い込んでおり、規則を間違った方向に適用している。彼らには感受性が完全に欠落している。FAには異議を申し立て、罰金の支払いを拒む権利がある」とコメントした。

■FIFAの態度は「理不尽」

 それ以外にも、ウェールズと北アイルランドが選手にポピーの花をあしらった黒い腕章の着用を許可していた。

 ウェールズがセルビアに1-1で引き分けた英カーディフ(Cardiff)での欧州予選では、試合前にピッチに花輪がたむけられると、観客席ではファンがプラカードを使ってポピーのモザイクを表現。北アイルランドもアゼルバイジャンに4-0で勝利したベルファスト(Belfast)での試合の前に、1分間の黙とうと花輪をささげ、会場ではポピーのモザイク画が示された。

 英国のテリーザ・メイ(Theresa May)首相は、FIFAの態度に対して「理不尽だ」と表明している。

 一方、今年3月に行われたスイスとの親善試合で、アイルランドは英国からの独立につながった1916年4月の「イースター蜂起(Easter Rising)」を記念するシンボルをユニホームにあしらい、5000スイスフラン(約57万円)の罰金を科されている。

 この件でアイルランドのサッカー協会(FAI)は、処分に対する異議申し立てをする意向を示していない。(c)AFP