「全裸腕立て伏せ」で社会批判、中国のアーティスト・区志航さん
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【12月19日 AFP】中国のアーティスト、区志航(Ou Zhihang)さん(46)は公の場でカメラをセットすると、あわただしく服を脱ぎ、尻をさらしたまま1回だけ腕立て伏せをする――作品の完成だ。
区さんは中国国内や、時には外国の路上で行った「全裸腕立て伏せ」の写真をこれまでに700枚以上撮ってきた。現代芸術の世界で他に類を見ないボディーアートだ。
しかし、区さんが選ぶロケ地は、政府の権力濫用やさまざまな抗議行動、災害などが起きた場所であり、作品がただ尻をさらすだけのものではないことを示している。「目的は私の腕立て伏せを見てもらうことではなく、こうした方法を使うことで社会に考えてもらうことだ」。故郷の南部広東(Guangdong)省広州(Guangzhou)市で、白のポロシャツとジーンズというラフな格好で点心を食べに行こうとしていた区さんは語った。
区さんは中国の大事件・大事故が起きたさまざまな現場で、全裸腕立て伏せ写真を撮影してきた。2008年には、30万人以上の乳幼児に健康被害を及ぼしたメラミン混入粉ミルク事件を起こした会社の前。2011年には、住民らが土地収奪に抗議し共産党当局に反旗を翻した広東省烏坎(Wukan)村や、高速鉄道事故の現場。2014年には、反政府デモが行われた香港(Hong Kong)。2015年には、化学工場の爆発事故が起きた北部の港湾都市、天津(Tianjin)。
体操の一つである腕立て伏せは「社会の強じんさの形成」を象徴しているのだと言う。
意外かもしれないが、区さんの作品はセンシティブな内容であるにもかかわらず、厳重な規制下にある中国のインターネット上で公開することができている。また「斜に構えた」社会批判なので、厳しく検閲されている中国メディアでも取り上げられてきた。
区さんは何匹もの犬に追いかけられたこともあれば、警察ともめたこともある。警察には何度か拘束され、写真の削除を命じられたこともある。2015年には、両親が出稼ぎに出て取り残された「留守児童」のきょうだい4人が農薬を飲んだ中国南部の家の前で逮捕され、記者証を見せてようやく釈放された。
区さんはリスクを認めている。「慎重にやらなければならない……自分が無事なときも」。そしてこう言う。「社会にとって有意義なことをしなければならない。そこから窓が開き、普通の人々に共有されるようになる。そういう変化はもう起きている」
区さんの作品はアートとジャーナリズムにまたがるもので、2010年には世界報道写真賞(World Press Photo Awards)を受賞した。15年にはイタリア・ベネチア(Venice)の大規模な美術展で注目を浴びた。だが、区さんはこれまで中国本土では大規模な展覧会を行っていない。オンラインで作品を公開する方が好きなのだと言う。
「欧米では大勢の人々が艾未未(アイ・ウェイウェイ、Ai Weiwei)氏の作品は素晴らしいと考えているが、ここ(中国)では公開されていない。彼の思想の多くは、大衆と交わることができないのだ」(c)AFP/Tom HANCOCK