【12月10日 AFP】世界反ドーピング機関(WADA)は9日、カナダの法律家リチャード・マクラーレン(Richard McLaren)氏によるロシアの組織的なドーピングを暴いた最終報告書を公表し、1000人以上の選手が「組織的な陰謀」に関与していたと結論づけた。そこでAFPは、報告書の中で重要なポイントをまとめた。

■国家ぐるみのドーピング

 新たに発表した報告書の中で、マクラーレン氏は「夏季および冬季競技の選手は個別ではなく、組織された構造の中で動いている」との見解を示し、ロシアの国家ぐるみのドーピングはスポーツ省や連邦保安局(FSB)なども関与する「組織的な陰謀」であることを、第1回目の報告書から引き続き明言している。

■ソチ五輪で「終わり」じゃなかった

 ロシアのドーピングシステムは、2014年に開催国を務めたソチ冬季五輪において、同国のアスリートが自国民の前で大きな成功を残すためのものだっただけではなく、その後も続行されていたことを明らかにしている。

 今回の報告書でマクラーレン氏は「第2回の報告書でさらに裏付けられた、ソチ(Sochi)における尿サンプルのすり替えは、冬季五輪閉幕以降も続けられていた。ソチで用いられたサンプルすり替え技術は、モスクワ(Moscow)にある研究所で、夏季および冬季競技の選手などに対して毎月、定期的に実施されるようになった」と明記している。

■1000人以上が関与

 ロシアで行われているドーピングの規模は驚くべきもので、パラリンピック選手を含む1000人を超える同国のアスリートが、夏季、冬季といった領域を超えて今回の問題に関わっているとされた。マクラーレン氏は「彼ら(アスリート)は、陽性反応を隠すための操作に関係したり、恩恵を受けたりしている可能性がある」との見解を示している。

■ドーピング技術の進化

 ロシアのドーピングシステムは、国際大会などを通し、数年間にわたって改良されていたという。世界反ドーピング機関(WADA)によるルール変更を考慮し、同国が検査官や新たなドーピング製品に対するより効果的な検査に先行するためだ。

 マクラーレン氏は報告書の中で「この組織的かつ一元的な隠蔽(いんぺい)とドーピング管理プロセスにおける操作は進化し、2012年のロンドン五輪をはじめ、2013年の第27回ユニバーシアード夏季大会(World Student Games)、世界陸上モスクワ大会(14th IAAF World Championships in Athletics Moscow)、ソチ冬季五輪を経て洗練されていった」と結論付けた。

■「不変の事実」

 第1回目の報告書を公表した際、国際オリンピック委員会(IOC)が事実ではなく疑惑だという対応を示したことで怒りをあらわにしていたマクラーレン氏は、報告書の結論は口述の証拠に基づいたものではないとしたうえで、重要な調査結果については1回目の報告書から変更はないとしている。

 マクラーレン氏は「不変の事実に基づく、法医学的な検査は決定的なものだ。独立調査官によって主導された法医学的かつ試験所における分析の結果は、2011年から2015年にかけて陰謀が働いていたことを確証する」と主張している。(c)AFP