ソーラーパネル、エネルギーの「負債」をすでに返済 研究
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【12月8日 AFP】過去40年間にソーラーパネルで発電された「気候に優しい電力」は、パネルの製造に使用された汚染を伴うエネルギーをほぼ相殺したとの研究結果が6日、発表された。
オランダ・ユトレヒト大学(Utrecht University)などの研究チームが行った計算によると、投入した汚染を伴うエネルギーと生産されたクリーンなエネルギーの間の、いわゆる「損益分岐点」にすでに達した可能性があるという。
研究チームが英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表した論文は、ソーラーパネル製造が環境に与える影響が大きく減少する傾向にあることを今回の研究は示しているとしている。
ソーラーパネルの製造には化石燃料のエネルギーが使われており、太陽光発電で相殺しても追いつかないほど速いペースで温室効果ガスが排出されている可能性があるとの懸念が持たれていた。今回の研究はこの懸念について調べるため行われた。
導入されたソーラーパネルの発電能力(導入発電容量)が2倍になるごとに、パネルの製造に使われるエネルギーが12~13%減少し、温室効果ガスの排出量が17~24%減少することを、論文の執筆者らは発見した。これらの減少の割合はパネルの原材料によって異なる。
ソーラーパネルの発電容量は、1975年以降の平均で年45%で急速に増加し、2015年には2300億ワット(230ギガワット)に達した。
論文の共同執筆者、ユトレヒト大のウィルフリート・ファン・サーク(Wilfried Van Sark)氏はAFPの取材に、現在世界には約10億枚のソーラーパネルが存在するが、1975年当時は1万枚足らずしかなかったと語り、導入発電容量は2016年末までに約300ギガワットに達すると考えられており、これは世界の電力需要の約1~1.5%に相当すると述べた。
■製造コストの減少
太陽光発電システムは、平均寿命の30年余りの間に、その製造に使用されたエネルギーを「数倍にして」返済すると、論文の執筆者らは指摘している。
研究チームは1976年以降のデータを調査し、世界規模では投入されたエネルギーと温室効果ガスの両方に関して、太陽光エネルギーの「負債が、すでに2011年に返済された可能性が高い」との計算結果を得た。最も保守的なデータで計算しても、投入エネルギーについては2017年に、温室効果ガスについては2018年に「損益分岐点」に達するとみられるという。
1975年以降、発電容量が2倍になるごとに製造コストが約20%減少したことも研究チームは明らかにした。太陽光発電ユニットの出力1ワットピーク(Wp)当たりの製造コストは、1976年には約80ドル(約9100円)だったのに対し、現在では約64~67セント(約73~76円)となっている。(c)AFP/Mariëtte Le Roux