ネットデマ信じピザ店で発砲… 偽ニュースの危険性、米で懸念増大
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【12月6日 AFP】虚偽のニュース記事により児童売春組織の拠点だと名指しされていた米首都ワシントン(Washington D.C.)の人気ピザレストラン店内で男がライフル銃を発砲する事件が発生したことを受け、インターネット上で日々影響力を増すデマや悪質なゴシップに対する懸念が高まっている。
エドガー・マディソン・ウェルチ(Edgar Maddison Welch)容疑者(28)は4日午後、家族連れでにぎわっていたピザ店「コメット・ピンポン(Comet Ping Pong)」の店内に入ると、持ち込んだアサルトライフル「AR15」を複数回発砲。幸い負傷者はいなかった。
警察は直ちにウェルチ容疑者を逮捕し、さらに別の武器2つも発見した。同容疑者は警察に対し、ネット上で出回っている疑惑を自ら究明するつもりだったと供述したという。この疑惑とは、同店が子どもの拉致事件の拠点になっており、米大統領選の民主党候補だったヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前国務長官とその上級顧問も関与しているとするもので、「ピザゲート(Pizza-gate)」の通称で呼ばれている。
ウェルチ容疑者は、この疑惑の虚偽が暴かれているにもかかわらず、ノースカロライナ(North Carolina)州から車で首都まで乗り込んでいた。この偽ニュースは、「インフォウォーズ(Infowars)」などのニュースサイトを装ったウェブサイトや、多数のフォロワーや政界とのつながりを持つ人々のフェイスブック(Facebook)やツイッター(Twitter)上の投稿にあおられる形で生き残り、インターネット上で拡散していた。
陰謀論や、「オルト・ライト」(オルタナ右翼)と呼ばれる超保守運動の関係者らの間で人気のインフォウォーズは、反論には耳を貸さず、証拠を一切示さないまま、同店が児童拉致組織に関与しているとの情報を流し続けた。
4日の発砲事件発生後には、ドナルド・トランプ(Donald Trump)次期米大統領が国家安全保障問題担当大統領補佐官への起用を発表したマイケル・フリン(Michael Flynn)元陸軍中将の息子であるマイケル・G・フリン(Michael G. Flynn)さんが自身のツイッターに、この偽ニュースに信ぴょう性を与えるかのようなコメントを投稿した。
フリンさんは、「ピザゲートが虚偽だと証明されるまで、この説は残る」と記すと、さらに同店に関する他の陰謀論を広めている他のユーザーらのコメントもリツイートした。
さらに、父親のフリン元陸軍中将の発言にも疑問の目が向けられている。フリン氏本人は同店に関して公のコメントはしていないが、先月8日の大統領選に先立ち、クリントン氏と児童買春組織とを関連付ける以下のツイートを投稿していた。
「自分で判断してほしい──ニューヨーク市警(NYPD)が新たなヒラリーメールについて告発:マネーロンダリング(資金洗浄)、児童性犯罪など…必読!」
専門家らは、偽ニュース記事や意図的に捏造(ねつぞう)されたゴシップは常に米政界に存在していたが、インターネットの普及により、そうした誤情報の出回る速度や範囲が増大し、表面上の信ぴょう性を得ていると指摘している。(c)AFP/Paul HANDLEY