小池百合子都知事、ファッションという名の大きな「武器」
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【12月5日 AFPBB News】東京都の小池百合子(Yuriko Koike)知事は今年8月の就任以来、築地市場の移転延期の決定や2020年東京五輪の予算見直しなど、その動きがニュースにならない日はない。トレードマークであるショートヘアや、選挙戦での勝負カラー「百合子グリーン」でも広く知られる存在だが、東京の新たな「顔」となった彼女のスタイルはいったいどんな社会的影響力を持つのだろうか。
11月30日に行われた第45回「ベストドレッサー賞(Best Dresser Awards 2016)」の授賞式では、「政治部門」と「ウールマーク賞(Woolmark Award 2016)」をダブル受賞した。実はベストドレッサー賞の受賞はこれで2度目。前回は2005年、環境相時代に提唱した「クールビズ」の功績により選ばれた。「今回は女性初(の東京都知事)ということもあるだろうが、社会に対してなんらかのメッセージを伝えたことによる反応であるのならばうれしい」と語る。
■「糸へん」の国、日本製ファッションの強み
地球温暖化対策の一環として提唱された「クールビズ」は、10年以上の時を経てすっかり定着した。エアコン設定温度の変化だけでなく、ノーネクタイでも襟が立つ仕様のシャツや機能繊維の開発も促し、繊維産業も活気づけた。「やはり日本は『糸へん』の国。繊維で栄えて、繊維で産業が保っている。これからも栄えてほしいと思い、『クールビズ』を始めた。着れば暖かく、着れば涼しい機能製品など、日本発のファッションがさらに世界へ広がってほしい」
そして日本の縫製技術や素材に更なる付加価値を付けて売りたい、というのが小池知事の考えだ。「やはり日本の素材は素晴らしい。例えばアラブ諸国の男性が着用する、ディスダーシャという白い衣服にも『東洋紡(TOYOBO)』の素材が使われている。そうじゃないと駄目だとみんな言う」。また、織りや編み、染色、縫製の工程を国内で手掛けた純国産衣服の認証制度「Jクオリティー」なども日本ファッション産業協議会によって進められているが、「それを世界にアピールするためには、より研ぎ澄ませていかなければ。また、パリコレのような若手を育成する活動が必要」と展望を語る。
■東京のブランディング強化への秘策
「東京を文化の発信地にしていく」と宣言しているが、ファッションはその経済的効果や対外的アピールも含めて大きな要素となる。先日は、舛添要一(Yoichi Masuzoe)前知事の時代に作られた東京都観光ボランティアの制服デザインに対し「見直す」意向を表明し注目をあびたが、2020年の東京五輪までに、東京発デザインのブランディング強化を図る勝算はあるのだろうか。
「ただ眠ってるだけ」のブランドが東京には数多く存在する、と小池知事は指摘する。「例えば江戸切子一つとってもそう。日本ならではの真ちゅうや京都の西陣織など、江戸で花開いたものもたくさんある。そういった宝探しを改めてやってみる必要があり、その中にファッションも入ってくる」
その上で参考にしているのが、フランスの「コルベール委員会(Comité Colbert)」だ。「エルメス(HERMÈS)」などのラグジュアリーブランドや文化機関が数多く加盟するフランスの歴史ある組織であり、お互いに磨きあって国の存在を高めている。それに倣って「ぜひ東京をベースにしたブランドの発掘と、その後押しをやっていきたい」という考えだ。
■リオ五輪のセレモニーで着物を選んだ理由
東京都知事として外交に携わる際には、自身が日本文化をアピールする役割も担う。その装いにはもちろん戦略が必要だ。「日本でも海外でも、ここぞというときは着物が一番効力を発揮する。あとは日本の素材などをうまく活用した服装。私は紙でできた洋服を持っているが、素材そのもののメッセージ性などを心掛けている」と語る。
今年8月、リオデジャネイロ五輪閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニーでも「着物しかない」ということで鶴の模様の色留袖を選んだ。「できるだけ大振りに見えて、旗に合わせて袖がひらひらするものに」と7万人収容の会場での見栄えも計算したものだ。「1000万円相当の着物なのでは?」という、ちまたのうわさに関しては「当然あり得ない。でもそう見えたのだとしたらありがたい」と笑い飛ばす。
現在は2020年東京五輪の準備に奔走中。ファッションさえも自身の武器として、小池知事は奮闘を続けていくのだろう。「クールビズ」や「百合子グリーン」といった言葉をはやらせた張本人は、ロングドレスの裾をひらめかせ、次なる公務へと足早に立ち去っていった。(c)AFPBB/Fuyuko Tsuji