【12月4日 AFP】暴漢、毒入り葉巻、貝殻爆弾、有毒物質で汚染させた潜水服──先月90歳で死去したキューバのフィデル・カストロ(Fidel Castro)前国家評議会議長を標的とした暗殺の企てにおいて、当時の米中央情報局(CIA)は存分な想像力を発揮していた。

 カストロ前議長は生前、自らが約600の暗殺計画の標的になったと述べていた。CIAの記録や、米上院のチャーチ委員会(Church Committee)による1975年の報告書は、試案段階止まりのものを含めスパイたちによる暗殺計画の数々を暴露している。

■権威失墜狙った「ひげ脱毛」作戦

 初期の計画の中にはカストロ氏殺害を企図しないばかりか、高校生のいたずらのようなものもある。チャーチ委員会の報告書によると、1960年の3~8月にかけて「CIAはカストロの演説を妨害することで、そのカリスマ性を損ねる計画を検討していた」という。

 その案の一つは、カストロ氏が演説を行う放送スタジオにLSDのような化学物質をスプレー散布するというものだったが、薬物は「当てにならない」として、この案は却下された。

 CIAの技術サービス部門TSDではカストロ氏に恥をかかせようと、演説前に葉巻を吸うことを想定し、葉巻の箱に一時的に方向感覚を失わせる化学物質を仕込む案が検討されていた。またカストロ氏のひげが抜け落ちるよう、強力な脱毛剤であるタリウムを靴に仕込み、「ひげのイメージ」を壊す計画もあったという。

■毒入り葉巻

 チャーチ委員会は「1960~65年の間にCIAが関与したフィデル・カストロ暗殺計画が少なくとも8回あった」ことを突き止めたとしている。カストロ氏が好んだ葉巻の箱には「葉巻を口にくわえただけで死に至る強毒性のボツリヌス菌」が仕込まれたこともある。この葉巻は1961年2月にある人物へ渡されたが「実際にカストロに渡そうという試みがあったかどうかは記録で明らかにされていない」という。