元ナチス親衛隊員、英国の村に全財産遺贈 捕虜時代の親切に感謝
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【12月4日 AFP】英国で戦争捕虜となっていたナチス・ドイツ(Nazi)の元兵士が、捕虜時代に受けた親切への感謝を示すため、遺言で全財産を英スコットランド(Scotland)の小さな村に贈与した。
ハインリッヒ・シュタインマイヤー(Heinrich Steinmeyer)さんは第2次世界大戦(World War II)当時、ナチス武装親衛隊(Waffen SS)に所属していた。フランスで捕虜となり、スコットランドのハイランド(Highlands)地方コムリー(Comrie)近郊のカルティブラッガン(Cultybraggan)戦争捕虜収容所に収容された。そこで当時19歳だったシュタインマイヤーさんは思いがけず温かい歓迎を受けた。
シュタインマイヤーさんの遺産38万4000ポンド(約5550万円)を管理することになった団体「コムリー開発信託(Comrie Development Trust)」のアンドルー・リード(Andrew Reid)さんは、「ハインリッヒ・シュタインマイヤーさんは捕虜となっていた間ずっと、予想だにしていなかったスコットランドの人たちの思いやりに心を打たれていました」と語った。
リードさんによると、シュタインマイヤーさんは戦後しばらくスコットランド中部パースシャー(Perthshire)のコムリー村に滞在して仕事をし、ドイツに帰国した後も同村を訪れて生涯変わらぬ友情を育んだという。
リードさんは、「彼は感謝の意を示すため、全財産を村のお年寄りたちのために残すと誓っていました」と述べた。
シュタインマイヤーさんは2013年、コムリー村でできた親友のジョージ・カーソン(George Carson)さんが亡くなってから2週間後に90歳でこの世を去った。しかし、シュタインマイヤーさんの財産に関するドイツでの法律上の手続きには非常に時間がかかり、最近ようやく終わったばかりだ。
カーソンさんの息子で、父親と同じ名前のジョージさんは3日、BBCのラジオ4(Radio 4)に「信じられない話だと思われるかもしれませんが、間違いなく本当のことなんです」と話し、母親とその友人たちが収容所のフェンス越しにシュタインマイヤーさんと友情を深めていったいきさつを語った。
「母たちはハインリッヒさんが映画を見たことがないと分かると、彼に学校の制服を着せ、捕虜収容所の金網フェンスを越えさせて映画館に連れ出しました。彼はそこで生まれて初めて映画を見たんです……そうした体験すべてに彼は間違いなく感動していたはずです」
リードさんによると、シュタインマイヤーさんは、捕らわれていたのがスコットランドで幸運だったと口癖のように言っていたという。(c)AFP