【12月3日 AFP】モンゴルの有名ラッパーが、モンゴルの伝統的な記号の一つである「まんじ」(かぎ十字)の入った衣装をまとってパフォーマンスをしたことが原因で、ロシアの外交官に激しく殴打され、10日間の意識不明に陥るほどの重傷を負った。ラッパーの弁護士と警察当局が2日、明らかにした。

 モンゴル語で「黒ばら」を意味する名のラップ・グループ「ハル・サルナイ(Khar Sarnai)」のリードラッパー、アムラー(Amraa)ことアマルマンダク・スフバートル(Amarmandakh Sukhbaatar)さんは、ウランバートル(Ulan Bator)で行われたイベントで、モンゴルのデールという伝統衣装を着てステージへ上がった。衣装には、まんじの模様が刺しゅうされていた。

 ところがその後、アムラーさんはまんじの模様が原因でロシアの外交官に襲撃されたという。アムラーさんの父親は「息子は金属片で顔を数回殴られ、重傷を負った。脳が深刻に損傷している」と語った。父親と弁護士、また同じラップ・グループのメンバーは、アムラーさんが「ハイル・ヒトラー」と言ったという報道は否定している。

 まんじ、またはかぎ十字は、一般的に数千年前のインドを起源とすると考えられており、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)がナチス・ドイツ(Nazi)のシンボルとして使うよりずっと以前から、モンゴルでは使われていた記録がある。

 第2次世界大戦(World War II)中、ナチス・ドイツとの戦いで数百万人の旧ソ連市民が死亡している。

 アムラーさんの弁護士は、捜査の進行は通常より遅く、容疑者も拘束されていないと話し、「外交官特権のあるなしにかかわらず、容疑者はモンゴルの法で裁かれなければならない」と語った。

 一方、警察当局はAFPの取材に対し、事件については捜査中で「容疑者はロシアの外交官で、身柄が拘束されていないのは(被害者の)けがが深刻ではないからであって、外交官特権のせいだというのは正しくない」と述べた。(c)AFP