【12月3日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は2日、アーティストらに対し、表現の自由と「危険なほどとっぴな行為」とを混同しないようにくぎを刺し、2015年1月に仏風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)の本社がイスラム過激派に襲撃されて著名な風刺画家ら12人が死亡した事件は、同紙がイスラム教徒を侮辱しなければ避けられたはずとの考えを示した。

 プーチン大統領がこの発言をしたのは、舞台や映画で活躍している俳優のエフゲニー・ミローノフ(Yevgeny Mironov)氏がテレビ討論会で、ロシアでは芸術的な表現の自由に対する制約が強まっていると懸念を表明したときのことだ。

 これに対してプーチン大統領は「私が危険なほどとっぴな行為と呼ぶものと、創造の自由との間には微妙な違いがある」と主張し「大まかに言えば、シャルリー・エブドの本社にやって来たあの活動家たちは人々を撃った。問題は、あの風刺漫画家たちはイスラム教徒を侮辱する必要があったのかということだ」とフランスの事件を例に挙げた。さらに「当局は多くの場合、何かを妨害したくて行動するのではない…多くの人々はパリのような悲劇をここで繰り返されることを望んでいない」と述べた。

 モスクワ(Moscow)の劇場「シアター・オブ・ネーションズ(Theatre of Nations)」の芸術監督を務めているミローノフ氏は、今回のプーチン氏とのテレビ討論で「創造の自由はわが国の法律によって保障」されており、それを禁じるならば「法律上の手続きを経なければならない」とコメントした。

 ロシアではこの数か月、宗教的、政治的保守派の活動家らが舞台を妨害したり、画廊に押し入って展示作品を破損したりする事例が相次いでいる。英作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバー(Andrew Lloyd Webber)のミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター(Jesus Christ Superstar)」も被害に遭うなどし、舞台監督のコンスタンティン・ライキン(Konstantin Raikin)氏は10月、「スターリン時代の再来」だと警鐘を鳴らした。

 ロシアの芸術シーンの中でも特に舞台の場合は、作品の制作資金が国家予算で賄われており、国の方針に左右され自主規制を求められることが少なくない。(c)AFP