【12月2日 AFP】現生人類の古代の祖先とされる猿人「ルーシー(Lucy)」は、木の上のすみかで1日の3分の1以上を過ごしていた可能性が高いとする最新の研究結果が11月30日、発表された。

 米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)と米テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)の研究チームが米オンライン科学誌プロスワン(PLOS ONE)に発表した最新の論文によると、ルーシーは陸上の移動方法に関して、現代のチンパンジーと現生人類の中間的な特徴を持っていた可能性が高いという。1974年にエチオピアで化石化した骨格の一部が発見されたルーシーは、318万年前に生息していた人類の近縁種とされる。

 ヒト亜族の一種で二足歩行していたアファール猿人(学名:Australopithecus afarensis)の女性個体で、身長約100センチ、体重27キロの愛すべきルーシーが、現生人類のように生涯の大半を地上で過ごしていたのか、それともチンパンジーのように木の上で生活していたのかについては論争となり、古生物学者らの頭を長年悩ませてきた。

 今回の研究では、ルーシーがたくましい上腕を持っていたことが分かった。これは、木登りを常時行っていたことを示唆している。一方で下肢は比較的弱く、木登りには使用されず、歩行の効率は低かった。

 これら2つの発見から研究チームは、ルーシーが夜間に捕食動物を避けるために木の枝の間にすみかを作り、木から木へと移動するのに腕を使っていた可能性が高く、さらに樹上で食物を探していた可能性すらあるとの結論を導き出した。

 研究チームは、ルーシーの骨を最新の高精度スキャン装置を用いて調査し、この結論に到達した。化石化した骨の無機物層を透視できる強力なスキャン装置で撮影した3万5000枚に及ぶ画像を合成し、その内部構造を分析した。

 両腕の上腕骨と左脚の大腿(だいたい)骨を調べた結果、ルーシーの上肢が高度に発達していたことを研究チームは発見した。これは、樹上生活をする現代のチンパンジーに似たたくましい筋肉を上腕骨が支えていたことを示唆している。

 論文の主執筆者の一人で、テキサス大のジョン・カップルマン(John Kappelman)教授(人類学)は「骨格が日常生活で受ける荷重に応じて、受ける力が強いとそれに抵抗するために骨量が増え、力が弱まると骨量が減るというのは、十分に確立された事実だ」と説明した。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に最近発表された別の研究では、化石化した骨にみられる骨折跡の分析により、ルーシーは非常に高い木から落ちたのが原因で死んだ可能性が高いと結論付けられている。

 だが、科学者らはこれまで、ルーシーが地上を離れて過ごしていた時間がどのくらいかを正確に判定できていなかった。今回の最新研究では、ルーシーの睡眠時間を1日約8時間として、生涯の少なくとも3分の1を樹上で過ごしたことが示唆されている。(c)AFP/Jean-Louis SANTINI