【12月2日 AFP】スクリーンに映し出された仮想の腕を使うコンピューター・ゲームで、切断者の幻肢の痛みが緩和されるとの研究論文が2日、発表された。幻肢とは、失った四肢の部分がまだあるかのように感じられる現象だ。

 切断者14人が参加した研究では、失った腕を仮想現実で「使用する」セッションが12回にわたり行われた。その結果、切断者らには、大幅な痛みの軽減がみられたという。

 研究論文の主執筆者はスウェーデン・チャルマース工科大学(Chalmers University of Technology)のマックス・オーティス・カタラン(Max Ortiz Catalan)氏。英医学専門誌ランセット(Lancet)に掲載された論文によると、切断者らは、痛みの継続時間、頻度、強さが半減したことを報告している。

 切断者は、しばしば失った腕や脚の痛み「幻肢痛」を報告する。切断から数年を経て痛みを訴えることもあり、実生活や精神衛生にも影響を及ぼす。このような痛みが起こるのは、切断部の神経末端が脳に痛みの信号を送り続け、まだそこに切断した腕や脚が存在していると思い込ませるためだ。

 幻肢痛への決定的な対処法は確立されていないが、現存する治療法の1つは、残っているもう一方の腕や脚を鏡に映し、脳にあたかも失われた腕が存在し、動いているように思わせることだ。ただ、この治療法の効果には個人差があり、両脚、もしくは両腕を切断している場合には使えない。

 この前提に基づいているのが仮想現実療法だ。切断者に失った腕を「動かさせ」、ビデオゲームの車の運転など、スクリーン上で特定の操作をさせる。この仮想の腕が思い通りに動くのを見せることで、切断者に幻肢があたかも実存しているような感覚を効果的に覚えさせる。研究では、脳に送られる信号を登録するために切断部に電極を取付けた。

 この療法で「切断前に腕を動かすために使われていた脳の部分を、再活性化させることができるようになる」と論文は説明している。(c)AFP