【11月30日 AFP】イングランドのサッカー界を揺るがしている元ユースチーム指導者の児童虐待事件で、事件の中心人物であるバリー・ベネル(Barry Bennell)容疑者が29日、8件の児童虐待の罪で訴追された。検察当局が発表した。

 少年に対する性的虐待の罪ですでに複数回服役しているベネル容疑者については、クルー・アレクサンドラFC(Crewe Alexandra FC)やマンチェスター・シティ(Manchester City)、ストーク・シティ(Stoke City)といったクラブで、30年以上にわたって虐待を繰り返していた疑いが浮上しており、同容疑者の指導を受けた少なくとも20人の元選手が被害を訴えていた。

 英公訴局(Crown Prosecution Service)は29日、「証拠を再検討した結果、公訴局の法規に照らして、14歳以下の少年に対する8件の性的暴行の罪で、バリー・ベネルが訴追された」との声明を発表している。

 ベネル容疑者は28日、英ロンドン(London)近郊のホテルで意識不明の状態になっているところを発見され、病院へ搬送された。法廷へは12月14日に出廷する予定となっている。

 イングランドサッカー協会(FA)のグレッグ・クラーク(Greg Clarke)会長が、記憶にある中で「英サッカー最大の危機」と評した今回の事件については、訴追の発端となったチェシャー(Cheshire)警察を含めた複数の警察当局が捜査を行っている。

 元ニューカッスル(Newcastle United)のデレク・ベル(Derek Bell)氏は、顔と実名を出してガーディアン(Guardian)紙のインタビューに応じ、地元の少年サッカーチームに所属していた1970年代に「恐ろしい」性的虐待に遭ったと明かしている。

「純粋に、信じられないほど胸が痛んだ。父や母が隣の部屋にいるなかで、あいつはそういう性的なことをしたんだ。そうやって何年も私たちを手なずけて、そしてそれを普通のことだと考えていた」

「普通じゃないのは心の奥底でわかっていたが、怖くてとても言い出せなかった。こんなのは間違っている」

 元北アイルランド代表のマーク・ウィリアムズ(Mark Williams)氏も、英スカイ・スポーツ・ニュース(Sky Sports News)で、虐待の苦しみについて語っている。

「この件は、私の人生に取り返しがつかないほどの影響を及ぼしてきた。私生活の面でも、サッカー選手としても。30年にわたってこの重荷を背負うのは、魂を破壊される苦しみだった」

 スコットランド警察も、域内で性的虐待の被害届が出されたため捜査を開始。FAも児童保護の専門家の下で内部調査を始めている。英政府も29日、事件に関する警察とFAの合同会議の場を設けると発表した。(c)AFP/Pirate IRWIN