【11月28日 AFP】スイスで27日、老朽化した原子力発電所の段階的閉鎖を加速する提案が国民投票で否決された。ただ、原発の稼働を段階的に停止するとした計画に変更はない。

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 2011年3月に起きた東日本大震災による福島第1原発事故を受けて、スイスでは、ドイツや日本と同様に、原子力発電所を段階的に閉鎖することが決まっている。

 27日に実施された国民投票では、国内に5基ある原子炉のうち3基を来年中に停止させ、脱原発を加速させることの是非が問われたが、結果は、反対票が54.2%となった。

 スイス以外にも、原子力政策を引き続き推し進める計画の国はある。他方で、新たな原子力開発を検討している国や原発依存からの脱却を目指す国など、その政策は様々だ。

■段階的閉鎖

 欧州最大の経済大国ドイツでは、現在原子炉8基が稼働している。福島第1原発事故の後、同国は、2022年までに原子力発電所の段階的閉鎖を決めた。

 ドイツのエネルギー移行計画では、電力需要におけるクリーンエネルギーの比率を、現在の約30%から2050年までには80%に増やす計画となっている。

 原子力計画の再開を予定していたイタリアでも、福島原発の事故後に実施された国民投票での反対を受け、計画の撤回を余儀なくされた。

 その他、ベルギーも2016~2025年に原子力の段階的廃止を計画している。

■継続方針

 福島原発事故の後、国内の原子力発電所が一時的に全て停止した日本では、2030年時点での望ましい電源構成について、原子力の比率を20~22%とする方針が打ち出された。

 日本以外で原子力発電を継続するとしている国には、英国や中国、フランス、インド、ロシア、米国などがある。

 中国や英国などでは、原子力発電所新設の計画もある。アフリカ唯一の原発保有国である南アフリカでは、クーバーグ(Koeberg)原発の原子炉2基に加え、新たに6~8基を新設したい方針だ。

 イラン・ブシェール(Bushehr)には、ロシアの協力を得て設置された100万キロワットの原子炉がある。イランでは今後、原子力関連施設20か所を新設し、石油や天然ガスへの依存低減を目指す。

 スウェーデンは6月、原子力エネルギーの段階的廃止を掲げた政策を転換させた。

■原子力を新たに採用

 そして、いくつかの国では、原子力エネルギーを新たに取り入れることについて検討されている。とりわけ中東の湾岸諸国では、現在発電に石油や天然ガスが使用されているが、こうした炭化水素資源を大切にしたい考えがある。

 こうした国には、エジプトやヨルダン、ポーランド、サウジアラビア、トルコ、アラブ首長国連邦などが含まれている。(c)AFP