トランプ氏勝利に沸き立つ極右運動「オルト・ライト」とは?
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【11月24日 AFP】「ヘイル、トランプ! 勝利万歳!」との叫び声に、熱狂的なナチス・ドイツ(Nazi)式で応える人々──先週、米首都ワシントン(Washington D.C.)のホワイトハウス(White House)からわずか数ブロック先で繰り広げられていた光景だ。
米大統領選でドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が勝利したことを受け、怒れる白人のナショナリストによる運動とされる「オルト・ライト」(オルタナ右翼)が活発化し、米国内の多くの人々が警戒している。トランプ氏本人もプレッシャーを受け、そうした動きから距離を置く姿勢を示した。
トランプ氏がヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前国務長官を打ち負かし、全米はもちろん、世界中が衝撃を受けてから2週間近くたった今月19日。ホワイトハウスに程近い会議場におよそ200人のオルト・ライト運動の支持者が集まり、白人至上主義と反移民政策による強いアメリカという思想に酔いしれ、浮かれ騒いだ。
「前進しよう。オルト・ライトは、先駆的な有識者集団として、トランプ氏を完璧な存在にできる」。参加者にこう呼び掛けたのは、オルト・ライトの事実上のリーダーの一人とされるリチャード・スペンサー(Richard Spencer)氏だった。
こざっぱりとした身なりで髪をきれいに整えている30代のスペンサー氏は、インターネット上で生まれ広まった捉えどころのないオルト・ライト運動の顔の一人だ。さほど知名度が高くない小さなシンクタンク「国家政策研究所(National Policy Institute、NPI)」の代表を務める。
NPIに集まってくるのは、多くは教育レベルが高い若者たちだ。賛同者には、トランプ氏率いる次期政権の首席戦略官・上級顧問に起用されたスティーブ・バノン(Steve Bannon)氏(62)もいる。
トランプ氏は22日、ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙のインタビューで、バノン氏を極右の人種差別主義者だとする批判が多いが、実際はそのいずれでもないと主張した。一方で、オルト・ライトを否定し「私が活気づけたいのはあのような集団ではない。彼らが活気づけられているとすれば、その理由を探ってみたい」と述べ、ワシントンで開かれたオルト・ライトの会合に関しては「彼らを非難する。彼らのことなど私は関知していない」と語った。
オルト・ライトは、共和党が体現してきた伝統的な保守主義に代わる右派(オルタナティブ・ライト)として、米政治の表舞台で突如、台頭してきた。きちんとした組織構造はないが、イデオロギー面では伝統的な極右思想、白人至上主義を信奉し、自由市場経済さえも否定しているのが特徴だ。