【11月10日 AFP】国の団結を掲げ8年前に初の黒人大統領に選出されたバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領にとって、今年の大統領選で共和党候補として出馬したドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が勝利したことは、大きな屈辱となったのではないだろうか──。

 選挙活動中、オバマ氏は全米を飛び回り、そのカリスマ性と魅力の部分で民主党候補のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前国務長官を補ってきた。政治的観点からすると、オバマ大統領の敗北である。

 しかし、オバマ氏にとって、70歳の不動産王が手にした成功は、いわゆる米2大政党間での敗北以上に、個人的にも手痛い一撃となった。

 今回の選挙を通じて見えてきたのは、グローバル化や多様性といった急速な社会の変化への対応で難しい立場に置かれた白人労働者階級の意向を探ることに、オバマ氏が失敗したとみられるということだ。

 トランプ氏は、これまでオバマ氏が取り組んできた政策の大半に関して、撤廃や再検証を公約に掲げ選挙戦に臨んだ。これらの中には、気候変動問題への取り組み、2015年パリ協定、環太平洋連携協定(TPP)、そしてオバマ氏の名が付いた医療保険制度改革なども含まれている。オバマ氏は今後、自らの「レガシー」がどれほど残るのだろうと自問するかもしれない。

 政治的にも人間的にも、オバマ氏とトランプ氏以上に異なる2人の人物を想像することはそう簡単ではない。

 ケニア人の父親と米国人の母親を両親に持つオバマ氏は、自身の力で人生を切り開き、米ハーバード大学(Harvard University)に進学。一方のトランプ氏は、家族の財産を相続し、ホテルやカジノを中心とする巨大な不動産企業を築き上げた。

 また、オバマ氏が理路整然としたスピーチを好み、失言などほぼ皆無であるのに比べて、ビジネスマンのトランプ氏は、攻撃的で時には下品な言葉を使い思ったことをまくしたてる。

 オバマ氏は最近、トランプ氏に対する批判の中で、選挙では「民主主義そのもの」が問われているとまで語っていた。