クリントン氏、全米得票数で勝るも敗北 制度改正求める声も?
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【11月10日 AFP】米大統領選で勝利した共和党候補のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏は、選挙人獲得数では過半数に達したものの、一般投票の得票数では民主党候補のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前国務長官に及ばなかった。2000年の大統領選でもこうした展開で共和党候補が勝利しており、選挙制度の改革を求める声が上がりそうだ。
一般投票では、クリントン氏が47.7%(5968万9819票)、トランプ氏が47.5%(5948万9637票)を獲得し、クリントン氏が僅差でトランプ氏を上回った。しかし、大半の州で勝者が選挙人を総取りする「選挙人団(Electoral College)」制度が採用されており、制度の性質上、トランプ氏が全選挙人538人の過半数を獲得して勝利する結果となった。
AFPの取材に応じた米コロンビア大学(Columbia University)政治学教授のロバート・シャピロ(Robert Shapiro)氏は、こうした複雑な選挙制度を批判する人々から米当局に対して制度の廃止を訴える声が出てくる可能性もあると指摘。
一方で、「抗議が出るのは最初のうちだけで、やがて収まるだろう」として、選挙人団制度を撤廃するには憲法改正という非常に困難な作業が必要になると述べた。
クリントン氏の一般投票の結果で思い出されるのは、2000年の大統領選で民主党候補のアル・ゴア(Al Gore)氏と共和党のジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)氏が争ったときのことだ。このときの一般投票では、ゴア氏が48.4%、ブッシュ氏が47.9%を獲得したものの、選挙人の獲得数によりブッシュ氏が勝利して物議を醸した。
近年の大統領選が接戦傾向にある中、シャピロ氏は、一般投票での勝者が選挙人獲得数で敗れるといった事態が今後さらに増え、「米国の選挙制度のどこが民主的なのか」といった疑問の声が一部から上がる可能性もあると予想している。
「1人1票」が民主主義の柱である一方で、皮肉なことに、合衆国憲法では大統領を直接投票で選ぶ権利は規定されていない。全米50州と首都ワシントン(Washington D.C.)にはそれぞれ、議会の代表を中心とする多数の選挙人が存在する。(c)AFP