【11月17日 AFP】クラブ史上初のドイツ・ブンデスリーガ1部挑戦で今季ここまで勝ち点24を獲得し、王者バイエルン・ミュンヘン(Bayern Munich)と並んで首位タイに立つRBライプツィヒ(RB Leipzig)。AFPはエナジードリンク大手レッドブル(Red Bull)の後援を受けるクラブが、開幕から10戦無敗の快進撃をみせる5つの理由を分析した。

■豊富な資金力と慎重な戦力補強

 ブンデスリーガ1部を初めて戦う多くの昇格クラブと異なり、ライプツィヒは資金面の問題を抱えていない。2009年のクラブ創設以来、レッドブルの共同創業者であるディートリッヒ・マテシッツ(Dietrich Mateschitz)氏が資金を注ぎ込んでいるからだ。

 しかし、7季で4つのカテゴリーを勝ち抜いて1部まで駆け上がったライプツィヒは、選手獲得について、高額の給料を提示してスター選手を集めるのではなく、伸び盛りの若手に資金を投じるという方針を貫いている。

 今夏は補強資金が5000万ユーロ(約58億円)に設定されているとみられる中で、最も大きな買い物は、イングランド2部のノッティンガム・フォレスト(Nottingham Forest)から1500万ユーロ(約18億円)で獲得したオリバー・バーク(Oliver Burke)だった。

 バイヤー・レバークーゼン(Bayer Leverkusen)から獲得したギリシャ代表DFキリアコス・パパドプロス(Kyriakos Papadopoulos)は期限付き移籍で獲得し、残りの資金は来年1月の移籍市場でさらなる戦力補強を行うために蓄えられている。

■「教授」の存在

 ライプツィヒには、ラルフ・ラングニック(Ralf Rangnick)氏という、ブンデスリーガ1部での昇格クラブの戦い方を熟知したスポーツディレクターがいる。ラングニック氏は2008-09シーズンに当時率いていたホッフェンハイム(1899 Hoffenheim)を昇格1年目でクリスマス前首位に躍進させ、最終的に7位に食い込んだ。2011年にはシャルケ04(Schalke 04)を欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)の4強に導いている。

 マテシッツ氏からクラブ運営を一任されており、現在は人事、そして高まる期待への対応といったクラブ管理に専念しているラングニック氏は、「シーズン全体を通してみれば、バイエルンを脅かせるチームは一つも存在しない。たしかに夢のようなスタートを切っているが、10試合でチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグ(UEFA Europa League)出場権を獲得できるわけではない」とコメントしている。

■明確なスタイル

 ラングニック氏の下で働くラルフ・ハッセンヒュッテル(Ralph Hasenhuettl)監督には、高速カウンターを主体にしたスピード感あふれるサッカーを好むという明確なスタイルがあり、ユースからトップチームまで、各チームが同じ哲学の下でプレーしている。

 ローテーションを多用するのもハッテンヒュッテル監督の特徴で、主将のドミニク・カイザー(Dominik Kaiser)でさえ、ときにはベンチスタートを受け入れなければならない。しかし、スター選手がいないことで、選手にはチーム第一の精神が浸透している。

 カイザーは「ここ数週間で、これだけ勝ち点を獲得できたことは信じられないけれど、それでも僕らが勝ってきたのは事実なんだ」と語った。

■鉄の掟

 若い選手が中心のチームは、学習意欲が旺盛で、ハッテンヒュッテル監督とラングニック氏の指示には絶対の忠誠を誓っている。たとえば、ドイツメディアはライプツィヒを「バイエルン狩りの一番手」と呼びたがるが、選手は一貫してその呼び名を拒否している。

 ハッテンヒュッテル監督は「みなさんがどう呼ぶかは自由だが、われわれにとってはチームの改善点を見つけることの方が重要だ。われわれはしばらくトップレベルのチームと対戦していない」と語った。

 ピッチ上でも規律は保たれており、リーグ戦10試合終了時点でイエローカードは計19枚で、レッドカードは一度もない。そのなかでボルシア・ドルトムント(Borussia Dortmund)、ハンブルガーSV(Hamburg SV)、VfLボルフスブルク(VfL Wolfsburg)などに勝利している。

 6日のマインツ05(Mainz 05)戦に3-1で勝利したことで、ライプツィヒは1993-94シーズンのデュイスブルク(MSV Duisburg)に並ぶ、開幕10戦無敗という昇格チームの記録を達成した。

 18日に行われる次節は、欧州チャンピオンズリーグの常連である強豪レバークーゼンとのアウェーゲームで、バイエルンとの注目の一戦は、12月21日に敵地ミュンヘン(Munich)で行われる。

 チームの快進撃を受けて、本拠地のザクセン(Saxony)州では、1997-98シーズンに昇格1年目で1部制覇を果たしたカイザースラウテルン(1.FC Kaiserslautern)の奇跡の再現を期待する声も上がっている。

■町のサポート

 旧東ドイツの町ライプツィヒは現在、1部リーグを戦うクラブが町にある幸せをかみしめている。本拠地レッドブル・アリーナ(Red Bull Arena)のチケットは、5試合のうち4試合で完売し、4万2558人のファンがスタジアムへ詰め掛けた。

 ほかのクラブの中には、サポーターのライプツィヒ戦遠征を拒否するところもあるが、本拠地のサポーターはチケットに殺到している。

 さらにクラブは現在、2006年W杯ドイツ大会の会場にもなったスタジアムの建て替え、または改装を検討しており、収容人数を7万人まで増やしたいと考えている。

 ライプツィヒ市もクラブの維持に熱心で、現在はコミュニケーションをさらに円滑にするため、「RBコミッショナー」というポストを新設しようとしている。(c)AFP