【11月9日 AFP】英イングランド南西部サマセット(Somerset)で、中世に食用として狩猟の対象となり絶滅寸前にまで追い込まれたツルを国内の湿地帯に呼び戻そうと、自然保護団体がツルに似た格好で飼育を行い、個体数の回復で成果を上げた。

 この活動では、ツルの繁殖計画「グレート・クレイン・プロジェクト(Great Crane Project)」の一環として、英国王立鳥類保護協会(RSPB)が幼鳥を卵から飼育した。これまでに、ツル93羽を育て、英国の野生ヅルの総個体数を160羽にまで回復させるプロセスにおいて重要な役割を果たした。

 メンバーの一人、デーモン・ブリッジ(Damon Bridge)氏は「これは信じられないほど有益な手法で、人が親鳥の代わりになることができる」と話す。

 2014年に終了したこの活動では、灰色の全身スーツを着たブリッジ氏と野鳥愛好家らが、ツルの頭に見立てた道具を用いて幼鳥と交流し、餌を与えた。

 ブリッジ氏によると、この活動の目的は幼鳥を育てて野生に放つまでの間に、人に対する「刷り込み」が起きないようにすることだったという。餌を採集する際に人に依存しないようにするためだ。この手法で育てた幼鳥は、野生で生き延び、自力で繁殖を始めるまでになった。

「ツルの個体数は、個体群の維持に最低限必要な数に達するほどにまで増加したと考えられる」と、ブリッジ氏は述べた。

 グレート・クレイン・プロジェクトは、RSPBと英国水禽湿地協会(WWT)、自然保護団体「ペンスソープ・コンサベーション・トラスト(Pensthorpe Conservation Trust)」が共同で実施している。

 WWTで野生生物の保全と繁殖に取り組んでいるレベッカ・リー(Rebecca Lee)氏は、「夢がかなった。ツルたちは英国の自然保護活動における真の成功事例になりつつある」と述べた。(c)AFP