【11月7日 AFP】シリアの少数民族クルド人主体の武装組織「シリア民主軍(SDF)」は6日、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が「首都」と位置付ける北部ラッカ(Raqa)の解放に向けた攻撃を開始したと発表した。ISに対してはイラクでも最大・最後の拠点モスル(Mosul)の奪還を同国軍などが進めており、米軍などの支援を受ける反IS勢力が同時並行で2大拠点の攻略に乗り出した形だ。

 クルド人の他にアラブ人も加わり、IS掃討作戦で米国の支援を受けているSDFの女性報道官、ジハン・シェイク・ アハメド(Jihan Sheikh Ahmed)氏はラッカの北約50キロの町アインイッサ(Ain Issa)で記者会見を開き、ラッカとその周辺の解放に向けた大規模な作戦「ユーフラテスの怒り(Wrath of the Euphrates)」が5日夜に始まったと明らかにした。戦闘員約3万人が参加しているという。

 SDF部隊はアインイッサとテルアビヤド(Tal Abyad)からラッカの北へ、マクマン(Makman)村からラッカの東へと、3方面から前進している。SDFのタラル・セロ(Talal Sello)報道官はAFPに対し、部隊はまずラッカ周辺の地区を占拠し、それに続いてラッカ市を奪取する方針だと述べた。

 イラク第2の都市、北部モスルでは6日、イラク政府部隊が3日目となる市内での戦闘を繰り広げたが、IS側も激しく抵抗している。モスル、ラッカ両都市の奪還作戦はいずれも米国主導の有志連合による支援を受けている。

 ラッカ攻略作戦をめぐりアシュトン・カーター(Ashton Carter)米国防長官は6日の声明で「モスルの場合と同様、戦いは容易ではなく、難しい仕事になる」と指摘。それでも、ISの「カリフ制国家」の虚構を終わらせ、米国やその同盟諸国に対するISのテロ攻撃遂行能力を破壊する必要があると強調した。

 一方、バラク・オバマ(Barack Obama)米政権で対IS有志連合の調整役を担うブレット・マクガーク(Brett McGurk)大統領特使は同日、ラッカに対する攻撃で米政府がトルコ政府と「緊密な連絡」を取っていることを明らかにした。ジョセフ・ダンフォード(Joseph Dunford)米統合参謀本部議長がこの日、トルコの首都アンカラ(Ankara)入りしたのもその一環だと説明した。

 トルコ政府はSDFに関して、トルコで30年以上にわたって反政府武装活動を行ってきた「クルド労働者党(PKK)」の一派と見なすシリアのクルド人民兵組織「クルド人民防衛部隊(YPG)」に支配されているとして、警戒感を示している。(c)AFP/Delil Souleiman with Sarah Benhaida in Mosul