【11月5日 AFP】デンマーク検察は4日、第2次世界大戦(World War II)中にベラルーシの強制収容所で守衛を務めていたとされる91歳のデンマーク人男性が罪に問われることはないと発表した。

 米国のユダヤ人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター(Simon Wiesenthal Centre)」の「ナチ・ハンター」として知られるエフライム・ズロフ(Efraim Zuroff)氏は2015年7月、デンマークに渡り、1942~43年に起きたとされる戦争犯罪でヘルムート・ライフ・ラスムセン(Helmuth Leif Rasmussen)氏を刑事告発した。

 ステーン・ベシュマン・ヤコブセン(Steen Bechmann Jacobsen)主任検事はAFPに対し、「捜査の過程で、サイモン・ヴィーゼンタール・センターの告発を裏付ける事実は出てこなかった」と述べた。

 1945年の警察の報告書を引用してラスムセン氏がナチス・ドイツ(Nazi)の占領下にあったベラルーシ・バブルイスク(Bobruisk)の強制収容所で守衛を務めていたと主張する書籍がデンマークで2014年に出版された。ヤコブセン検事は、同書の著者を含む2人の歴史家と密に協力して捜査を進めたと述べ、「この本だけではラスムセン氏が具体的な罪を犯したり、何らかの犯罪を共謀したりしたと証明することはできない」と付け加えた。

 ラスムセン氏はその後名前を変え、今はデンマークのコペンハーゲン(Copenhagen)地域で暮らしている。同氏は国家社会主義デンマーク労働者党(Danish Nazi Party)が創設したデンマーク義勇軍(Free Corps Denmark)の一員だったことは認めたが、バブルイスクには17歳のときに軍事訓練を受けに行ったにすぎないと主張していた。

 ヤコブセン検事は、同強制収容所で働いていた別のデンマーク人男性(現在はスウェーデン国籍)も捜査したがこの男性も起訴しないと述べた。

 デンマークでは1940年4月~1945年5月のナチス・ドイツ占領時代に約6000人がデンマーク義勇軍に志願した。

 デンマークの歴史家デニス・ラーセン(Dennis Larsen)氏とテーケル・ ストレーデ(Therkel Straede)氏が2014年に発表した本によると、バブルイスクでは最大で1000人のデンマーク人が働き、少なくとも1400人のユダヤ人が殺害された。(c)AFP