【11月1日 AFP】第2次世界大戦(World War II)中に数多くのユダヤ人の命を救ったものの、旧ソビエト連邦(Soviet Union)に身柄を拘束され、行方が分からなくなったスウェーデンの外交官ラウル・ワレンバーグ(Raoul Wallenberg)氏をめぐり、スウェーデン政府は10月31日、正式に死亡を認定した。行方不明となってから70年以上が経過してからの認定となった。

「スウェーデンのシンドラー(Swedish Schindler)」と呼ばれる同氏の消息については、冷戦時代最大の謎の一つとされてきたが、その遺体の行方はいまだに分からないことから、今回の発表は謎の一部を明らかにしたにすぎない。

 ワレンバーグ氏は、ナチス・ドイツ(Nazi)の占領下にあったハンガリーで、スウェーデンの保護証書を発行し、何万人ものユダヤ人を逃がした。

 しかし終戦の数か月前になって旧ソ連軍がブダペスト(Budapest)に侵攻し、同氏は1945年1月、司令部に呼び出されたのを最後に行方不明となった。

 そしてこのたび、出生や死亡の登録を行うスウェーデン税務当局が、ワレンバーグ氏の公式の死亡日を1952年7月31日と発表。行方不明となってから最低5年が経過した後に初めて死亡と認められるため、この日付となった。1947年7月末までは、生存していた形跡があるとされている。

 今回の決定の前には、ワレンバーグ氏の遺族の代理人がスウェーデン政府に対し死亡証明書の発行を求めていた。政府は同氏の捜索通知を発行したが、所在についての新たな情報は入手できていなかった。

 遺族がAFPに宛てた昨年の声明には、「(ワレンバーグ氏の)死亡宣告は、われわれがこれまで背負ってきたトラウマを癒やす手段で、先に進むための一つの区切りとなる」と書かれていた。

 行方が分からなくなった当時、ワレンバーグ氏は32歳だった。同氏がブダペストで組織した救出作戦により迫害を免れたユダヤ人の数は約10万人と推定されている。(c)AFP