中国の「世界一悲しいホッキョクグマ」 各国で怒りの声続く
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【10月29日 AFP】中国・広東(Guangdong)省広州(Guangzhou)市のショッピングセンターで飼育・展示されている「世界一悲しいホッキョクグマ」とされる雄の「ピザ(Pizza)」を救出する国際的キャンペーンに、100万人以上の署名が集まったことが、動物愛護団体の発表により明らかになった。今週には、ピザの哀れな姿を映した新たな動画が公開され、怒りの声を改めて呼び起こしている。
広州市のショッピングセンター内にある動物園「正佳極地海洋世界(Grandview Aquarium)」では、ピザに加え約500種の動物が飼育されており、動物愛護団体が施設の閉鎖と飼育動物たちの移送を求めている。
今週には、同国の50に及ぶ動物愛護団体が連名で、この動物園が違法に運営されているとの理由で閉鎖を求める書簡を、広東省の朱小丹(Zhu Xiaodan)知事とショッピングセンター宛に送付した。
AFPが確認した朱知事宛の書簡のコピーによると、この動物園にはホッキョクギツネやオオカミ、セイウチなどの動物たちが「窓もなく、環境エンリッチメント(動物の健康な飼育のための環境上の工夫)も施されていない小さな空間」で飼育されているという。
書簡に加え、世界中から計100万人分の署名を集めた請願書2件も朱知事に送られた。
動物園側は、同施設が「法律を遵守している」と説明した上で、今後は「動物の権利と福祉の保護を強化する」とも約束していた。
しかし動物愛護団体「国際人道協会(HSI)」が今週公開した動画では、観覧客が携帯電話で写真を撮る中、ピザが40平方メートルのガラス張りの部屋の中を、頭を振りながら歩き回る姿が映し出されていた。
動画の中では、ピザが寂しげな様子で空気口の前に横たわる場面もあった。HSIの国際メディアディレクター、ウェンディー・ヒギンズ(Wendy Higgins)氏はAFPに対し、これはピザが「新鮮な空気を吸おうとしている」姿だと説明している。
また、HSIの獣医学顧問を務めるアラステア・マクミラン(Alastair Macmillan)教授は、動画の中で頭を振りながら歩き回るピザの行動は「欲求不満と劣悪な生活」により引き起こされていると指摘している。
ピザについては、英イングランド(England)のヨークシャー野生動物公園(Yorkshire Wildlife Park)が、代わりとなるホッキョクグマを飼育しないことを条件に引き取りの申し出をしたが、動物園側は国外組織の介入は不要として、これを拒否している。(c)AFP