【10月28日 AFPBB News】奥多摩の山間部。廃校になった小学校で、小型無人機(ドローン)パイロットを目指し、実習に励む生徒たち。座学で学んだ知識をもとに、操縦前の設定や点検から、ドローンの飛行操作方法までを実践していく。

 ドローンスクールが今、首都圏を中心に増えている。現在ドローン飛行に免許は必要とされないが、2015年12月に改正航空法が施行され、人口集中地区での飛行は原則禁止され、国土交通省への事前申請・許可が必要となった。その際、機体や法律に関する知識、10時間以上の飛行経歴などが必要になるため、それを専門的に学べる場の需要が高まっているのだという。

 ドローン操縦士認定スクール東京校で講師を務める田口厚(Atsushi Taguchi)氏は、「都内でも5、6校以上開校しており、ほぼ満員。首都圏の需要は大きいと思う。この秋にも立ち上がるスクールもいくつかある」と話す。

 ドローンは、空撮や点検、物流など様々な分野でその活躍が期待されている。調査会社のシード・プランニング(Seed Planning)によれば、ドローンの機体および関連サービスの市場規模は2015年38億円であったのに対し、2020年には約16倍の634億円に成長する見込みだ。2024年には更に利用が進み、2270億円規模の市場になると予測されている。

 しかし、関連ビジネスが拡大する一方で、ドローンを操縦できる人材は不足しているという。「ドローンのオペレーターや知識を持つ人が少ないため、そこを育てることが急務」と田口氏。「ビジネスとして活用できるという感触を得ている人は多いが、どうアプローチしていいかわからない。そこを埋めるのがドローンスクール」

 当校のドローン操縦士養成コースでは、およそ2か月間にわたり、ドローンの基本構造や法律の知識などを学んだ上で、整備、点検方法からドローンの飛行や緊急時の操作などの訓練を受ける。全科目を修了し、試験に合格すると操縦技能証明書などを取得できる。

  授業の最終目標は、ドローンを使った空撮技術の習得。「点検や物流に役立てる話もあるが、まだどれも技術的に足りない部分がある。ハイビジョン以上の映像を撮ることができるなど、現状で完成度が高いのは空撮。空撮を通して技術を磨き、そこで得たノウハウを、他の事業に転用して役立ててもらいたい」と田口氏は話す。

 受講する生徒は、企業からの派遣や、個人、小規模事業主までさまざま。今年の夏季講座は、25人が受講。女性の受講者も増えているという。

 サービス業を営む仲真理子(Mariko Naka)さんは、ドローンの操縦者不足を取り上げたテレビ番組を見て、ドローン関連の事業を立ち上げたいと思ったという。「最初の段階で産業に参画できるチャンスはあまりないなか、ドローンはまだ入り口。そこにかけてみたいと思った」。妊娠のために現在は休職中の猿田愛(Ai Saruta)さん(32)は「女性の活躍する場が少ないので、今後空いた時間にできたらいい」と語る。

 なかには就職活動を控えた若者の姿も。大学3年生の小山大成(Taisei Koyama)さん(20)は就活の幅を広げるためにドローンスクールを受講した。「ドローンが普及しつつあるなか、操縦者が求められていると思う。資格を取れば、求められる人材になれるかもしれない」

 田口氏によれば、地方のドローンスクールはまだ少ないが、今後増えることを期待しているという。(c)AFPBB News/Hiromi Tanoue