ハンセン病の偏見と闘う元患者女性、ランウェイで輝く 東京
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【10月21日 AFP】槙ミヨ(Miyo Maki)さん(83)は、これまでマニキュアをしたことがなかった。10歳の時に発症したハンセン病のため爪が厚くなり、変形しているからだ。
しかし、自身の誕生日でもあった19日、ハンセン病の元患者の槙さんはネイリストが施したピカピカのつけ爪を誇らしげに見せた。そして臨んだのが、開催中の「アマゾン ファッション ウィーク 東京(Amazon Fashion Week TOKYO)」のランウェイだ。
槙さんは、レースの白いドレスを着てランウェイを歩き、人々の視線を一身に浴びた。槙さんも他のハンセン病患者も、病に対する強い偏見ゆえにこれまでずっとできなかったことだ。
「最高でした」と、ショーを終えた槙さんは言い、持っていた花のブーケを胸に引き寄せた。「83歳になりましたが、最高の誕生日を迎えました」
日本では数千人ものハンセン病元患者が強制隔離され、槙さんも治癒したにもかかわらず偏見と闘いながら一般社会と離れて暮らした。
ハンセン病は1940年代に「プロミン」という薬の有効性が確認されて以降、治療が可能になった。世界的にほぼ根絶に向かっているが、現在も年間20万人の新規患者が報告されている。
元患者たちは、治癒した後でも感染するという誤った認識による差別にさらされ続けている。顔や手足に後遺症が残る場合があることも、偏見を取り払うことを困難にしている。
槙さんが登場したのは、デザイナーの鶴田能史(Takafumi Tsuruta)氏が手掛けるファッションブランド「テンボ(tenbo)」のショーだ。今回同ブランドは、ハンセン病患者たちが耐えてきた屈辱を表現することを目指した。
ランウェイでは「No Leprosy(ハンセン病禁止)」と書かれたジャケットを着た警察官の格好をした男性がハンセン病患者役のモデルを連行するパフォーマンスもあった。
鶴田氏は普段からショーに多様な顔ぶれのモデルを起用しており、今回のショーにも槙さんの他に、視覚に障害がある人や車いすに乗った人、トランスジェンダー(性別越境者)の人などがモデルとして登場した。
ショーの後に鶴田氏は、ハンセン病について「今は治る病気とされているのに、いまだに差別偏見がなくならない」と語った。(c)AFP/Harumi OZAWA