【10月21日 AFP】英ロンドン(London)の猫カフェで米国人のチェロ奏者デービッド・タイ(David Teie)氏(60)がチェロで甲高い音を数回鳴らしてから低音を奏でると、足先が白い小さな黒ネコのリジーがぴたりと歩を止めた。茶白の雌ネコ、ドニーもじゃれるのをやめて近寄って来る。

 タイ氏は猫アレルギーがあるのだが、全曲がネコのための曲だけという世界初のアルバム「ミュージック・フォー・キャッツ(Music for Cats、ネコのための音楽)」を制作。アルバムは大手レーベル「ユニバーサルミュージックグループ(UMG)」からリリースされた。

 ロンドン東部ショーディッチ(Shoreditch)にある猫カフェ「Lady Dinah's Cat Emporium(レディ・ダイナのネコ施設)」で開催されたプレミア演奏会に来場した13匹のネコたちは、最初こそ警戒していたが音楽に満足した様子だった。

「ミュージック・フォー・キャッツ」に収録されたゴロゴロ、キュンキュンといった音は、鳥のさえずりや母ネコがのどを鳴らす音など子ネコが耳にする音からイマジネーションを得ている。「ゴロゴロという音を出せる楽器は26種類ぐらいある」と、米メリーランド大学(University of Maryland)のチェロ講師でワシントン・ナショナル交響楽団(National Symphony Orchestra)での演奏経験もあるタイ氏はAFPに明かした。

「ネコが気に入る曲を作っても、飼い主が不快に感じたら、かけてもらえないと思った。だから人間向けの音楽を織り込んで聞きやすくした」とタイ氏。実際、人間が聞いても癒やされる音楽になったという。

 プレミア演奏会を企画した猫カフェのオーナー、ローレン・ピアーズ(Lauren Pears)さんによれば、タイ氏のネコ向け音楽は普段カフェで流している曲とさほど変わらない。「うちのネコたちは午前中ずっと、彼(タイ氏)を見つめていた。ほんとうに面白がっているみたい」

 今月14日にリリースされたこのアルバムについて、ユニバーサルミュージックの広報担当者は「世界初のプロジェクトに携わって人間以外の音楽ファン向けの巨大な未開拓市場に参入を果たし、非常に興奮している」と語っている。

 英国で「猫ビジネス」は一大産業だ。ある調査によると、英国のネコ700万匹に飼い主たちは毎年40億ポンド(約5100億円)を費やしているという。

 音楽市場の対象となる動物はネコに限らないというのがタイ氏の考えだ。「馬のための音楽も作曲した。いつでも、レコーディングできる」既にタイ氏は犬向け音楽のためのリサーチを始めているそうだ。(c)AFP/Maureen COFFLARD