快挙の裏で不祥事続きのNZラグビー界、問題の根源はマッチョな文化か
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【10月25日 AFP】ラグビーニュージーランド代表、通称「オールブラックス(All Blacks)」がテストマッチ18連勝の快挙を成し遂げ、新たな高みに到達した一方で、同国ラグビー界では競技のイメージ、特に女性からのイメージを失墜させるグラウンド外の醜聞が続いている。ストリッパーとのいざこざに、路上での暴力、強姦未遂などの性行為がらみの不祥事を受け、ニュージーランドラグビー協会(NZRU)は、ラグビー界にはびこるマッチョな文化にメスを入れる必要に迫られている。
ニュージーランドのラグビー界が抱える問題は、今年8月から次々と明るみに出た。スカーレットという名前のストリッパーが、シーズン終幕を祝う打ち上げパーティーの場でチーフス(Waikato Chiefs)の選手から侮辱されたと告白。チーフス側は女性の職業を理由として発言に信ぴょう性はないと強調し、調査を行ったNZRUも彼女の主張を退けるとともに、選手は潔白だと発表したが、これが人権団体の反発を呼んだ。
9月には将来が期待された10代の選手ロシ・フィリッポ(Losi Filipo)が起こした暴行事件への対応が大きな批判を浴びた。フィリッポはウェリントン(Wellington)の路上で女性2人を含む4人に激しい暴行を加えたが、裁判官は同選手のキャリアを考えて無罪判決を下し、協会も選手を擁護した。ところがこれに国民が大反発。NZRUは最終的に態度を180度転換し、フィリッポは契約を解除された。
そして10月にも公衆の面前で自慰行為に及んだ選手、強姦未遂を起こした別の選手が逮捕される事件が立て続けに発生し、ニュージーランド国内におけるラグビーのイメージはよりいっそう失墜している。
テストマッチ通算54試合出場を誇るSHアーロン・スミス(Aaron Smith)の不祥事も、タイミングとしては最悪だった。スミスは9月、南アフリカ戦を終えて代表チームと移動している最中に、クライストチャーチ国際空港(Christchurch Airport)の多目的トイレに女性と一緒に入るところを目撃された。法律違反はなかったものの、この行動は「重大な過ち」とみなされ、オールブラックスとスポンサーの評判を傷つけた。1試合の謹慎を科されたスミスは、自主的に22日のオーストラリア戦選出も辞退している。
■男性優位の文化を変えるべきとの声も
オールブラックスがテストマッチ18連勝を達成したにもかかわらず、一連のスキャンダルを受けてテレビ解説者は同国ラグビー界にとって「地獄のシーズン」だと発言。国民の全面的な後押しを受けられるのが当然だった状況から苦しい立場に追い込まれた協会関係者は、ラグビーの「尊厳と責任」を見直す独立委員会の立ち上げを検討している。
地元紙ニュージーランド・ヘラルド(New Zealand Herald)のグレゴール・ポール(Gregor Paul)記者は、NZRUの対応のまずさが問題をここまで大きくしたと指摘し、「選手の恥ずべき行いを見逃し、厳しい対応をまったく取らなかったのは協会の責任であり罪だ。彼らの過ちは、みなを敵に回したこと。何より痛かったのは、この国でとりわけ発言力を持った女性たちを敵に回したことだ」と語った。
女子ラグビーニュージーランド代表の元選手で、年間最優秀選手に選出された経歴も持つルイーザ・ウォール(Louisa Wall)氏は、まずは協会トップが現在のような文化を変える必要があるとの見解を示し、協会の理事に女性を入れ、女性がラグビーに深くかかわれる体制をつくるべきだと訴えている。
地元紙に対して「女性はキッチンで料理を作り、ユニホームを洗っていればいいんだ。これがニュージーランドに根強く残る女性観です」と述べたウォール氏は、「私たちが指導者やコーチ、審判としてみなされることはありません」とコメントした。(c)AFP/Neil SANDS