【10月13日 AFPBB News】あるときは勝利を呼び込む「招き猫」として、またあるときは見学客をもてなす「看板猫」として――日々鍛錬が繰り広げられる相撲部屋やボクシングジムで飼われているネコたち。人間の気持ちを知ってか知らずか、厳しい練習に励む選手を愛嬌(あいきょう)で支えている。

■相撲部屋の猫親方

 中国・内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)出身の幕内・蒼国来(Soukokurai)関ら12人の力士が在籍する東京都中央区の荒汐部屋(Arashio-beya)。ここではネコたちが、文字通り力士たちと寝食を共にしている。オスの「モル」は、荒汐親方(Arashio Oyakata、61)の横で朝稽古を頻繁に見守る姿から「猫親方」というあだ名がつくほど。今月は同部屋のネコと力士をテーマにした写真集が相次いで刊行されるなど、人気はうなぎ登りだ。

 12年前の九州場所で、宿舎にえさをねだりに来ていた子ネコを目にした親方が、「なんかこのネコ違うな」と、東京まで連れ帰ってきたのがモルだ。蒼国来関が、モンゴル語でネコを意味する「モル」と呼び掛けていたことから、いつしか名前になった。

「(猫の存在は)やっぱり癒やし。稽古終わってほっとしたときになごんでくれればいいかな」と親方は目を細める。

■ボクシングジムの敏腕営業マン

 WBC世界フライ級王者の内藤大助(Daisuke Naito)選手を輩出した葛飾区の宮田ジム・スポーツクラブ(Miyata Gym)でも、21歳のメス「チャトラン」たちが練習を見守る。約30年前に宮田博行(Hiroyuki Miyata)会長(50)がジムを開設してほどなく、隣家がネコを置き去りにして引っ越してしまった。代わりにジム内で世話をするようになって以来、いつも王者を目指す選手たちのそばにネコがいた。

「最初に見学に来たときに、膝にのってきて癒やされました」とジムに通う都内の大学生、篠田佳太(Keita Shinoda)さん(22)。彼も、玄関脇の椅子に陣取るチャトランに緊張を解きほぐされ入会した一人だ。「チャトランは敏腕営業マン。私の時も、愛想をふりまいてくれました」と女性練習生たちも口をそろえる。

「みんな寿命を全うしてほしいから気を使います。心配も増えるし」と苦笑いする宮田会長が見つめる先では、ネコたちがのんきに後ろ足で首を掻いていた。(c)AFPBB News