戦後ドイツ司法省職員の7割超は元ナチス党員 戦犯かばう 研究
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【10月12日 AFP】第2次世界大戦(World War II)後のドイツ司法省ではナチス・ドイツ(Nazi)の元党員が多数を占め、以前の仲間をかばっていたとする論文が10日、発表された。
論文によると、1957年には同省の上級職員のうち、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)率いたナチスの元党員は77%を占め、この割合は1933~45年の「第三帝国(Third Reich)」時代よりさらに高かったことが明らかになった。
「これほど割合が高いとは予測していなかった」と、論文の共同執筆者で司法省元職員の記録を調査したクリストフ・ザファリング(Christoph Safferling)氏は日刊紙・南ドイツ新聞(Sueddeutsche Zeitung)に述べている。
報告書は、元ナチス党員らが結束していたため、互いに司法の裁きから逃れたことを示している。収監されたナチスの戦争犯罪者が極めて少ないことを裏付けるものだ。
今回の報告書の対象は司法省の官僚だけだが、過去には1950年代の旧西ドイツでは裁判長の70%以上が元ナチス関係者だったことも明らかになっている。
報告書は、戦後初期の旧西ドイツではナチスによる犯罪が社会で忘れられつつあったことを改めて浮き彫りにしている。当時のドイツ国民は荒廃した国の再建に力を注いでおり、多くの人は過去の犯罪を否定し、連合国がナチス戦犯を裁いた1945~1949年のニュルンベルク裁判(Nuremberg Trials)を「勝者の裁き」として受け入れなかった。
結局、連合国と後の西ドイツの司法が有罪を宣告したのは、元ナチス党員のごく一部である6650人程度にすぎなかった。
転機となったのは2011年、強制収容所の看守だったジョン・デミャニューク(John Demjanjuk)被告(12年に死亡)に対しユダヤ人虐殺の共犯で禁錮5年の刑が下されたことだ。それが判例となり、90代になった元ナチス党員に対する数多くの歴史的な判決が後に続いた。2015年に「アウシュビッツの簿記係(Bookkeeper of Auschwitz)」と呼ばれたオスカー・グレーニング(Oskar Groening)被告が禁錮4年の有罪判決を言い渡されたのもその一例だ。
これらの裁判について、ホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)に加担して現在まで生き残っている戦犯がついに裁かれたとして評価する声もある一方で、裁かれる人間が少な過ぎる、遅きに失したという見方もある。(c)AFP/Frank ZELLER