【10月4日 AFP】文学界で最も噂となっていた謎の一つ、イタリアの女性作家エレナ・フェランテ(Elena Ferrante)氏の正体が明らかになったと3日、報じられた。

 これを受け、作品を特徴付けている可能性がある作家の身元や経歴に関する情報を保護する権利や報道倫理をめぐり、文学界で議論が持ち上がっている。

 フェランテ氏の身元を暴露したのは、イタリア人の調査報道ジャーナリスト、クラウディオ・ガッティ(Claudio Gatti)氏。フェランテ氏への印税の支払いに関する証拠を目にしたという。それによると、フェランテというのはローマ(Rome)在住の翻訳家で、著名な作家の妻、アニタ・ラジャ(Anita Raja)氏のペンネームだとしている。

 フェランテ氏の出版社エディツィオーニ(Edizioni)は、同氏の素性について否定はしなかったものの、作家のプライバシー権が侵害されたとして怒りをあらわにし「世界中から愛されている偉大なイタリア人作家が犯罪者のように扱われるのは非常に不愉快だ」との声明を発表した。

 フェランテ氏の作品は、ナポリ(Naples)を舞台にした代表作「My Brilliant Friend」をはじめ、入り組んだリアルなストーリーと女性同士の友情の本質に迫る洞察が高く評価されている。

 フェランテ氏はこれまで出版社を介した電子メールでのやり取りで100件程度のインタビューしか応じておらず、その謎めいた正体にメディアの関心が高まったことも成功の一因とされる。(c)AFP/Angus MACKINNON