体内で成長する移植用の人工血管、動物実験で成功 米研究
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【9月28日 AFP】米ミネソタ大学(University of Minnesota)の専門家チームは27日、ヒツジの皮膚細胞を使って作製した人工血管の移植片を子ヒツジに移植し体内で自然に成長させることに成功したとの研究結果を英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表した。
論文の共同執筆者のロバート・トランクイロ(Robert Tranquillo)氏は声明で、患者の体内で成長できる入手が容易な移植用材料はこれが初めてかもしれないと述べている。
もし人に応用できれば、病気に苦しむ子どもたちが外科手術を何度も受ける必要性から解放されるだろうと研究論文は指摘している。
先天性の心臓疾患がある子どもは、体内で成長や再生をすることがない人工血管の移植片を交換するため心臓切開手術を5回以上受けなければならない場合が多い。
この種の人工血管に代わるより長持ちする移植片を探求する研究で、トランクイロ氏と研究チームはドナーのヒツジの皮膚細胞から血管に似た管を実験室内で培養した。
約5週間後、研究チームはヒツジの細胞をすべて洗い落とすための特殊な洗浄剤を使用して足場のような管だけを残した。この管を子ヒツジ3頭の肺動脈の一部を交換するために使用した。肺動脈は、心臓から肺に血液を運ぶ血管だ。
研究チームによると、子ヒツジ自身の細胞を移植用の管に再配置することで管を体内で成長させることが可能な上、異組織として免疫系による拒絶反応が生じるのを回避できるという。移植を受けたヒツジは、正常に発育して成熟した。
「これは、組織工学と再生医学の絶妙な組み合わせだ。ここでは、実験室で培養された組織が、移植者の体の自然作用によって再び生きた組織となる」とトランクイロ氏は説明した。
次の段階では、うまくいけば「数年以内に」人の臨床試験を実施できるだろうと研究チームは話している。(c)AFP